情報提供:増田 耕一

季節ごとで降水量に大きな変化がみられるアジアモンスーン地域

赤道付近の一部の地域を除き、一般的にアジアモンスーン地域では、雨や雪の降水量に大きな季節変化がみられる。具体的にアジアモンスーン地域における北半球各地の降水量の季節変化をみると、多くの地点で夏(図1: 5-8月)に降水量が大きいことが分かる。さらに夏の降水と風の分布を詳しくみると、対象地域のうち熱帯域(※)では南西モンスーンの風が吹くとともに雨季となり、温帯域では平均風速は小さいが、水蒸気が多く供給されるため降水量の大きい地域が多いことも分かる。
冬(11-2月)には降水と風の分布は図2のように変化する。温帯では北西風、熱帯では北東風となる。降水量の多い地域は、海からモンスーンの風が吹きつける風上側の海岸から数100km風下までの範囲にある。

※熱帯域:赤道を中心に南北回帰線に挟まれた地域
1997-2002年平均の5-6月、11-2月降水量と地上風

図1.(写真左) 5月-8月の当プロダクトによる緯度経度1度格子の降水量(色分け、白はデータ欠損)とJRA-25再解(気象庁と電力中央研究所による)のデータから作図した平均の地上風(矢印)。いずれも1997-2002年の平均。
図2.(写真右) 11月-2月の当プロダクトによる緯度経度1度格子の降水量(色分け、白はデータ欠損)とJRA-25再解析(気象庁と電力中央研究所による)のデータから作図した平均の地上風(矢印)。いずれも1997-2002年の平均。

アジアモンスーン地域の複雑な降水量の季節変化の特徴を表現できるデータ

こうしたアジアモンスーン地域の複雑な降水量の季節変化を表現するために、「アジア域の格子点降水量データ」を作成した。時間は月ごと、空間は経度緯度1度(約100km)ごとに、地上の雨量計による観測データから空間内挿(※)している。例えば、このデータを使い、インドシナ半島での降水量の季節変化を比べると、西海岸(ミャンマー モールケイン付近)と中央(タイ コンケーン付近)ではいずれも雨季は夏のモンスーン期であるが、降水量は両地域間で大きく異なることが分かる(図3左、図3中央)。一方で、同じインドシナ半島でも東海岸(ベトナム フエ付近)では、雨の多い季節は冬のモンスーン期のはじめごろにあたることが分かる(図3右)。季節変化をさらに詳しく調べると、日本の梅雨と盛夏のような違いもある。それは月ごとのデータにも現われている。例えば、タイのコンケーン付近では雨季でも7月の降水が前後の月と比較して少ない(図3中央)。今後は日ごとのデータに基づいて、季節内の変動も表現した情報発信に取り組みたい。

※空間内挿=空間分布をもつ変数(ここでは降水量)について、観測点の位置で与えられた既知のデータ群をもとに、格子点の位置でのデータ値を推定すること。
1997-2002年の平均の月降水量[mm/月]

図3. インドシナ半島を横断する北緯16.5度線上の西・中央・東の升目での降水量の季節変化。 1997-2002年の平均の月降水量[mm/月]。位置は図1・図2中に赤で示した。