情報提供:久保田尚之・赤坂郁美・増田耕一
モンスーンアジアの人々にとって、台風などによる自然災害や、モンスーンの降水量の変動が、地球温暖化に伴ってどう変わっていくかは、重要な関心事の1つである。これらの解明には、過去の長期にわたる気候の変化とその原因を研究することが必要となる。しかし、これらの研究に欠かせない気象観測値のデータセットは、多くの場合、20世紀後半以降のものしか得ることが出来ない。特に東南アジア地域では、50年を超える気候の変化をとらえることが難しい現状にある。ただし、東南アジア地域でも、いくつかの地域では100年以上の気象観測値を得ることが出来る。フィリピンもその地域の一つである。
フィリピンでは19世紀末から気象観測が開始されており、その記録は1940年頃までは「フィリピン気象月報・気象年報」に紙の状態で保存されていた。このうち、アメリカ合衆国統治下のフィリピン気象局がまとめた「フィリピン気象月報」にある日降水量データを電子化して復元したのが、この「20世紀前半のフィリピン降水量データセット」である。このデータセットに含まれる観測地点は「フィリピン気象月報」にまとめられた観測地点の全てではなく、主に現在のフィリピン気象庁(PAGASA)の観測所の2km以内に設置されていた地点である。緯度・経度は、フィリピン気象庁の観測所と必ずしも同一ではないが、現在の観測所のデータと比較可能なため、合わせて100年以上の継続した日降水量のデータセットとして利用することができる。
1909年10月のフィリピン北部における台風の影響を記録した写真

写真は、どちらも「フィリピン気象月報」に気象観測記録と共に収録されているものである。1909年10月のフィリピン北部における台風の影響を記録した写真である。