Simulation News vol.3

「長周期地震動の予測シミュレーション 〜 共振する超高層ビル〜」

東京大学地震研究所 の古村グループは、今年5月、1944年の東南海地震(M8.1)の地震計記録の復元に成功しました。それにより東京や横浜では震度は4~5ですが、ゆっ くりとした揺れが(周期約8秒)30分以上続いたことが確認されました。同グループは、地球シミュレータを使って、将来の東海、東南海地震発生の際には、 1944年の4倍以上の規模で、周期の長い揺れが発生すると予測しています。これは巨大地震の揺れが、やわらかい堆積層の平野を通り抜け、硬い岩の層にぶ つかって反射反復し、数分間~数10分間揺れ続ける「長周期地震動」と呼ばれる現象です。この揺れは木造家屋を含めて、中層~低層階の建物に大きな影響は ないのですが、過去において存在しなかった超高層建築物が大きな被害を受けるというのが 最近の研究で分かってきました。なぜ、超高層建築物だけが被害を 受けるのでしょうか。
物には「振動の固有周期」という、その物体が最も揺れやすい周期があります。下の固有周期一覧を見ると、超高層建物(60m以上)は周期2~6秒で、長周期地震動に周期が近いので共振してしまうのです。

<固有周期一覧>
建造物 時間 (秒)
木造家屋 0.1 ~ 0.3
中低層建物 0.2 ~ 1
高層建物 ~ 2
超高層建物 2~6
大型石油タンク ~15
長大橋 ~25

長周期地震動に共振を起こすとどうなるのでしょうか。それを教えてくれたのが、十勝沖地震でした。2003年の十勝沖地震(M8.0)では、震源地 から約250km離れた苫小牧は、堆積層のやわらかい平野で、周期7秒の長周期地震動が発生しました。沿岸の石油タンク群がこれに共振し、数分間、揺れ続 けたためタンクの蓋が破損し大火災となりました。当初は、石油会社の管理責任が問われましたが、後の調査で長周期地震動のもたらした被害であると判明しま した。

  首都圏では、都市再生プロジェクトに沿って空前の超高層ビル建築ラッシュで、2003年から現在までに70棟を越える超高層建造物が建てられて いますが、今年の11月20日に発表された、「長周期地震動に対する耐震性向上の共同提言」(地震部会、土木学会、日本建築学会が2年の歳月をかけて作 成)では、シミュレーションによって発生が予測されている長周期地震動を踏まえて、現存の全ての超高層建築物に早急な「長周期地震動」対応策が必要である と警告されています。

<東海・東南海地震発生時の「長周期地震動」発生予測シミュレーション>

100秒後 震源地から揺れが大きく広がる。

100秒後
震源地から揺れが大きく広がる。

300秒後(5分後) 関東平野で「長周期地震動」が発生。

300秒後 (5分後)
関東平野で「長周期地震動」が発生。

画像提供:東京大学地震研究所/古村孝志助教授

Web版 2006年12月更新