シンポジウムは終了しました。ご参加ありがとうございました。
高橋 桂子((独)海洋研究開発機構地球シミュレータセンター)
本プロジェクトは,平成17年9月に災害予測シミュレーションの高度化と題して採択された。本プロジェクトでは,シミュレーションと実験の両面から,予測精度を向上するためにはどのようなモデルが必要か,どのような計算手法が必要か,またどのような実験を行う必要があるのか,についての基盤的な予測技術の研究開発を推進してきた。本年度末において,プロジェクトは3年半を経過する。プロジェクトにおけるこれまでの研究活動と研究成果を紹介するとともに,"シミュレーション"と"実験"という2つのキーワードをもとに,今後の新たな展開についても検討する。
矢川 元基(東洋大学計算力学研究センター)
大規模シミュレーションを行う者にとって解の精度は常に気になることである。また得られた近似解が正しいかどうかの検討も必要である。ここでは,これらの問題についていくつかの観点から議論したい。
伊藤 智義(千葉大学大学院工学研究科人工システム科学専攻)
2007年末に総務省が「2025年までに『夢の立体テレビ』を開発する」と発表した。この文言は次の二点を示唆している。一つは,毎年のように「立体テレビ」と報道されている新製品が本当の意味での立体(3次元)にはなり得ていないこと,もう一つは,3次元テレビを実用化するためには,今後さらに15年以上の歳月を見込まなければならないほどの技術的困難があるということである。ホログラフィは本当の意味での3次元テレビになり得る技術の一つであるが,計算負荷の膨大さが難点になっている。私たちの研究グループでは専用計算システムを開発して飛躍的な高速化を試みており,その現状と応用について報告する。
早稲田 卓爾 (東京大学大学院新領域創成科学研究科海洋技術環境学専攻)
海洋波の研究は,観測,室内実験,理論及び数値実験が,四つ巴となって,推進された。そして,鍵となるいくつかの重要な発見が,室内実験で成されたことは,特筆に価する。一方で,スケーリングの難しさから,水槽内の風波と外洋での風波は本質的に違うのではないかとも言われている。また,海洋波とはある種独立して,水面波の非線形波動理論という分野も確立された。このように,4輪が時にばらばらに,時に同調することで,海洋波の理解は進んできた。そして,この10年,フリーク波と呼ばれる外洋に突然現れる巨大な波の研究が強力に推進され,海洋波研究は新たな局面に差し掛かっている。これまで室内実験や非線形波動理論が扱ってきた,制約された特殊な波浪場に類似する環境が,気象条件や海流の影響など外的要因の変動の結果,実海域でも実現しうるというのである。すなわち,平均的な海洋波の記述から外れる特殊な海況が生じたときに,フリーク波の発生頻度が高くなるということである。そして,この帰結は室内実験から予見されていたのだ。このような海洋波研究の歴史を紹介する。
小森 悟 (京都大学大学院工学研究科機械理工学専攻)
風波乱流水槽を用いた室内実験および直接数値計算法を用いた数値シミュレーションの併用により風波気液界面を通しての熱および物質の輸送機構の解明と輸送量の評価を試みた。具体的には,熱および炭酸ガスの放散実験を行うことにより風波乱流場での熱および物質の輸送量とそれらの移動係数を正確に評価するとともに,風波気液界面近傍での乱流計測をも行った。これらの実験結果と直接数値シミュレーションの結果とから熱および物質の輸送機構を風波界面近傍の乱流構造と関連付けて明らかにした。また,これらの結果を基にしてバルク法に基づくグローバルな大気海洋間の熱および物質の交換量の評価を行うとともに,既往モデルによる交換量の評価値との比較検討を行った。
尾形 陽一(広島大学大学院工学研究科機械システム工学専攻)
※矢部 孝(東京工業大学大学院理工学研究科機械物理工学専攻)から変更になりました
渡辺 重哉 (宇宙航空研究開発機構(JAXA)研究開発本部風洞技術開発センター高度化セクション)
航空機,宇宙機の空力特性予測には,従来,空力実験(EFD:Experimental Fluid Dynamics)が主に用いられてきたが,近年CFD (Computational Fluid Dynamics)技術も急速に向上してきた。そのような状況の中で,両者の技術的な連携,融合による新たな高精度かつ高効率の空力特性予測技術の創出の重要性が高まってきている。宇宙航空研究開発機構(JAXA)では,現状の風洞(「アナログ風洞」)に対してCFD(「デジタル風洞」)を強く連携させたEFD/CFD融合システム(通称,デジタル/アナログ・ハイブリッド風洞)の構築に取り組んでいる。本システムでは,CFD活用による風洞試験の効率化,精度・信頼性向上を目指した複数の機能を統合させたシステムの構築を目指している。本講演では,その全体構想とシステムの予備設計結果について報告する。
神田 学(東京工業大学大学院理工学研究科国際開発工学専攻)
都市気象は様々なスケールの環境流体現象を含んでいます。ミクロに見ると建物周辺の複雑流れですが,マクロに見るとその上空に外層(大気境界層)が存在する完全粗面上の乱流内部境界層です。スケールの異なる,風洞実験・フィールド観測・屋外都市模型実験を総合的に整理すると,物理相似則とマルチスケール解析の必要性が理解されます。最近の知見と問題認識を紹介し,今後の方向性を議論していただければと思います。
足永 靖信((独)建築研究所)
ヒートアイランド現象をはじめとする都市域の気候現象の予測は極めて重要な課題であり、ヒートアイランド対策の視点から都市域の熱および運動量のモデル化が必要であると考えられる。建築研究所では、JAMSTECの開発モデルに都市的効果を反映させることを目的として、建物群の平均的なボリュームを3次元的に取り扱う多層型都市キャノピーモデルの開発に取り組んでいる。この研究の特徴は、温度成層風洞を用いた熱実験を実施している点にあり、ブロック群周りの詳細なデータに基づいて多層型都市キャノピーモデルの検討を実施するものである。多層型都市キャノピーモデルをメソスケールモデルに結合した首都圏の解析事例も紹介する。