平成16年10月13日(水)、東京・イイノホールにおいて、「人と地球のやさしい関係 - 20XX年、地球はこう変わっている」をテーマに、「第3回地球シミュレータセンター・シンポジウム」を開催いたしました。

前半は、地球シミュレータを用いて研究が進められている、温暖化問題、超伝導、たんぱく質、地球磁場の逆転という4件のプロジェクトの成果発表が行われました。

小松 左京氏
後半のパネルディスカッションでは、SF作家の小松左京氏、ジャーナリストの立花隆氏、進行役に佐藤哲也センター長が、「シミュレーション文化が拓く人類と地球の未来」について討論を行いました。
小松氏は、世界の歴史や自らの体験を振り返りながら、環境変動やそれによる災害等が人間生活や社会に与える影響について語り、それらに対する備えとしてシミュレーション科学が果たす役割に期待していることを語られました。

立花 隆氏
立花氏は、地球シミュレータが開拓するシミュレーション科学の可能性に大きな期待を抱きながらも、シミュレーションと現実の誤差の問題に着目し、そこに様々な課題が潜んでいることを指摘。

佐藤 哲也センター長
佐藤センター長は、ミクロからマクロまで丸ごと扱える地球シミュレータによるシミュレーションの精度の高さを示し、予測不可能だと考えられてきた非線型の世界も物理法則に添って全体のシミュレーションを行えば、十分に再現が可能であることを実証。このようなシミュレーションに根ざした新しい科学によって人類と地球の明るい未来の扉を開いていきたいと、「これからの成果に、大きな期待をもって見守っていただきたい」とまとめました。
アンケートではシンポジウム全参加者のうち、60%以上の方にご回答をいただきました。

また「地球シミュレータを使った研究に期待することは?」という問いに対して、一番多かったのは、約10%の方から頂いた回答で、「地震や台風の進路などの自然災害の予知と防止」でした。
貴重なご意見をありがとうござました。
このところ世界各地の異常気象が話題になることが多くなった。日本の昨年の冷夏、今年の夏の猛暑、台風の上陸、ヨーロッパの昨年の熱波、中国の東北部や南部の洪水、等々。これらの異常気象は地球温暖化の現れでないかと懸念されている。
地表で吸収された太陽エネルギーは、大気や海洋の流れによって低緯度から高緯度に運ばれ、そのお陰で高緯度地方でも人間が居住できる温度に保たれている。今年公開された近未来映画「デイ・アフター・トモロー」では、地球温暖化に伴って極の氷が溶け、高緯度に向かう海洋による熱の輸送がとまり、ついには氷河時代が引き起こされてしまう。果たして、現実の世界でこのようなことが起きるのだろうか。

地球シミュレータを使って、日本の気象研究所、東京大学気候システム研究センター、電力中央研究所の3グループは、それぞれの特徴を活かした最新のモデルを用いてシミュレーションを行い、今世紀から来世紀の気候の現実を描こうとしている。20XX年、海洋の流れは、梅雨前線の活動は、台風の発生数や強度はどう変わっているのだろうか。今日は地球シミュレータで得られた最新の成果を紹介したい。
超伝導とは、電気抵抗ゼロをはじめとして色々と特殊な現象を示す物質の状態である。我々は、この超伝導を生かしてテラヘルツ発振器の開発を進めている。
テラヘルツとは電波と光の間に存在し(図1)、1012/秒の振動数を持つ電磁波である。X線よりも安全に体内の症状を検出する医療機器や、1秒あたり現在の1,000倍の情報量を送信する機器等、幅広い応用が期待されているが、地球シミュレータで我々の開発は急進し、完成まであと3-4年のところまでこぎつけた。
超伝導スーパーコンピュータの開発では、プロセッサー部分がまもなく完成するので、メモリーと、プロセッサーとメモリーの接続媒体が完成すれば、計算性能は地球シミュレータの数万倍というスーパーコンピュータが誕生する。
また、常温で超伝導を示す物質が発見されれば、例えば砂漠に設置した巨大な太陽電池発電所から、電気ロスゼロの超伝導線材で世界各地に送電が可能となり(図2)、化石燃料や、原子力発電に頼らなくてもよくなるだろう。

このように、超伝導の可能性は無限で、20XX年の人類の未来は、限りなく明るいと確信する。
植物は光合成によって、また、動物は食物を摂ることによって、エネルギー摂取を行い、生命を維持している。これら地球上の全ての生命活動は、蛋白質による化学反応を中心とした、生体分子の関与する化学現象によって支えられている。
写真は、DNA の組み換えを行う蛋白質である。生物は、いかにして、このような分子レベルでの微細加工を実現しているのか?また、蛋白質の一種である酵素は、対象となる分子を厳密に選別し、水溶液中で必要な化学反応を効率的に引き起こすが、そのメカニズムも分子レベルで精巧に制御されている。
20XX年には、生物物理や量子化学の研究を通じ、このような生体の物資生成に関わる巧みな原理を人間の生産活動に活かし、生命の神秘に習うものづくり革新技術が生み出されるだろう。これらの安全で効率的な技術を適応すれば、現在、人類が直面しているエネルギー問題や環境問題への解決策が見出されると期待される。

本講演では、生体分子シミュレーションの最新状況と課題について紹介し、この分野でのコンピュータの望ましい機能について展望する。
地球の磁場の逆転現象は、地球科学に残された大きな謎の一つである。
地球の中心にあるコアと呼ばれる部分は、4000度以上にも達する高温の鉄でできていて、莫大な量の電気(電流)が発生している。電流が発生すると、その周囲に磁気(あるいは磁場)が発生することはよく知られているが、コアの電流はリング状に流れているため、そのリングのちょうど真ん中に棒磁石を置いたような格好の磁場が生じている。北極がS極になっているので、方位磁石のN極は北をさす。
そして、この地球磁場の向き、つまり地球の南北が数十万年に一度、突然逆転する。一番最近の逆転は約80万年前に起きた。この不思議な逆転現象は、地球の歴史の中で過去何度も起きたが、その原因については未だに解明されていない。

しかし、この10年間におけるスーパーコンピュータの発展とシミュレーション技術の進歩によって、実際の地球と同じ形の磁場や、その逆転現象さえもコンピュータの中で再現できるようになってきた。西暦20XX年には、磁場逆転の謎の解明が進み、人類は地球という惑星をもっと理解し始めているだろう。