平成17年7月14日(木)、東京・千代田区立内幸町ホールにおいて、「人と地球のやさしい関係 ~ シミュレーション科学の最前線~」をテーマに、第4回地球シミュレータセンター・シンポジウムを開催いたしました。
前半は「地球環境への挑戦」というテーマで台風、猛暑、地震関係、後半は「未来への挑戦」というテーマでブラックホール、ゲノム研究、宇宙太陽発電、自動車開発シミュレーション、また最後に地球シミュレータセンター佐藤センター長から次世代シミュレータに向けて「未来社会と連結階層シミュレーション」の演題で講演を行いました。

第4回シンポジウムは、研究者による成果発表のみを行いましたが、地震と台風の予測研究に注目が集まり、講演の様子がTBSテレビ、NHK総合テレビの当日夕方のニュースで放送されました。

貴重なご意見をありがとうござました。
このところ世界各地の異常気象が話題になることが多くなった。日本の昨年の冷夏、今年の夏の猛暑、台風の上陸、ヨーロッパの昨年の熱波、中国の東北部や南部の洪水、等々。これらの異常気象は地球温暖化の現れでないかと懸念されている。
地表で吸収された太陽エネルギーは、大気や海洋の流れによって低緯度から高緯度に運ばれ、そのお陰で高緯度地方でも人間が居住できる温度に保たれている。今年公開された近未来映画「デイ・アフター・トモロー」では、地球温暖化に伴って極の氷が溶け、高緯度に向かう海洋による熱の輸送がとまり、ついには氷河時代が引き起こされてしまう。果たして、現実の世界でこのようなことが起きるのだろうか。
これを私は連結階層シミュレータ(MMI:Macro-Micro Interlocked)と呼んでいます。世界のシミュレータのブレークスルーとなるアーキテクチャーであり、21世紀の社会の持続的発展の牽引車となるだろうと考えています。」
佐藤 哲也 (地球シミュレータセンター長)
高橋桂子 (地球シミュレータセンター)
大気、海洋などの地球規模の大きなスケールの現象と、ビルの谷間に吹く風や、工場が排出する科学物質などの小さなスケールの現象まで、独自に開発したモデルを使って、統合的なシミュレーションを行っています。この開発したモデルを用いて、平成15年台風10号の進路と降雨予測を行い、観測値にほぼ一致するシミュレーション予測結果が得られました。

榎本 剛 (地球シミュレータセンター)
高解像度(約20km格子)による全球大気シミュレーションを行い、東京で平年を約10℃も上回るような以上高温(2004年7月20日)の再現に成功しました。関東地方に起きたこの猛暑は「シルクロード・パターン」と呼ばれる偏西風の蛇行の影響だと考えられます。

松浦 充宏 (東京大学)
松浦グループでは、南海地震のようなプレート境界で起きる地震と新潟県中越地震のようなプレート内部で起きる地震の両方の予測研究を行っており、独自に開発した日本列島域のプレート沈み込みモデルとGPSなどの観測を併せたシミュレーションにより、大地震が発生する条件とその予測可能性が明らかになってきました。
下図は1968 年の十勝沖地震後35 年間の地震予測シミュレーションです。

古村 孝志 (東京大学地震研究所)
新潟県中越地震(M6.8)では、震源から200km以上も離れた関東平野において、周期が7 秒前後のゆっくりとした揺れ(長周期地震動)が5分以上も続き、超高層ビルが大きく揺れました。今後30年以内に首都圏直下でM7クラスの地震が起きる確率は70%になります。大地震が起きた時、街と建物がどのように揺れるか地球シミュレータで予測しました。

阪口 秀 (地球内部変動研究センター)
地震による液状化現象は、地盤内の水圧変動が直接の原因であると考えられてきましたが、水の存在にかかわらず周辺の条件次第で流動化することがシミュレーションによって解明されました。また、流動化した砂では、物体の大きさと形が原因で浮力が生じることも明らかになりました。

松元 亮治 (千葉大学)
ブラックホールは、強い重力場で、近くにある星や星間ガスを吸い込んでおり、この渦巻状に吸い込まれていく星間ガスの中心部から宇宙ジェットと呼ばれるプラズマの流れが噴出しています。このジェットの正体を解き明かすための研究も進められています。

郷 信広 (日本原子力研究所)
ゲノムは遺伝子から成り立っており、生命を支える要素機能を担うタンパク質分子の情報が遺伝子に書き込まれています。各遺伝子の要素機能の高次機能への統合は、タンパク質分子の相互作用により達成されます。計算機シミュレーション技術の進歩は、タンパク質複合体のダイナミックスを第一原理からの再現が可能となり、21世紀は、計算機によってゲノムの塩基配列から、その意味を解読し高次機能体の働きをシミュレーションで理解しようとする時代でもあります。

臼井 英之 (京都大学生存圏研究所)
1968 年に宇宙太陽発電所(SPS)が提案されました。SPSは宇宙空間に設置した大型太陽電池パネルによって得られるエネルギーをマイクロ波で地球に伝送するものであり、人類の未来への大きな希望と言えるでしょう。京都大学スペースグループでは、このSPS 実現に向けた様々な研究に取り組んでいます。

梅谷 浩之 (社団法人日本自動車工業会)
日本自動車工業会では、地球シミュレータセンターと共同で、地球シミュレータによる、衝突等自動車性能シミュレーションの高精度化を検討しています。1台の車を世界で初めて1000万点で分割した衝突実験のシミュレーションの結果等、これまでの検討成果をご紹介させていただくとともに、今後の検討の進め方について、ご説 明いたします。
