平成15年度地球シミュレータ共同プロジェクト利用報告会

利用責任者名 : 木村 富士男 (海洋科学技術センター 地球フロンティア研究システム)

発表者名 : 坪木 和久 (名古屋大学 地球水循環研究センター 気象学研究室)

共同プロジェクトテーマ : 高精度雲分解領域モデルの開発及び多目的に渡るメソ研究への応用:階層的構造をした雲システムの水循環モデリング

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発表要旨

1.プロジェクトの目的

地球水循環において重要な役割を持つ雲システムには、階層構造を持つものがあることが知られており、各階層が水循環にそれぞれの役割を果たしていると考えられる。本研究は、雲を詳細に表現しかつ高解像度で領域内に起こる全ての階層を陽にシミュレーションすることを目的としている。さらにこれによりそれぞれの階層の構造、メカニズム、水循環の実態、その役割及び階層間の関係を明らかにすることが目的である。

2.今年度当初の計画

本研究では大規模並列計算機のために開発してきた雲解像領域モデル CReSS (the Cloud Resolving Storm Simulator) を用いる。本年度は初年度であるので、まず CReSS の地球シミュレータへの最適化を行なう。その上で東アジア・日本周辺における主要な水循環システムである、冬季寒気流中に形成される筋状雲、梅雨前線に伴う雲システムと豪雨、及び台風とその内部に形成される降雨帯についてシミュレーション実験を行なう。

3.今年度得られた成果、および達成度

<成果>

  1. 雲解像モデル CReSS の地球シミュレータへの最適化と性能評価を行なった。その結果、ベクトル化率 99.4% 、並列化率 99.985% 、ピーク性能比率約 30% を達成し、 128 ノードによる利用申請をした。この場合の並列化効率は 86.5% となる。
  2. 寒気流中の筋状雲のシミュレーションを水平解像度 300m で行なった。その結果、寒気流中に約 300km に及ぶ筋状雲が形成された。その形態は最上流側ではロール状対流で、それが下流にいくにつれて徐々にセル状対流雲列に変わり、さらにベーナルレイリー対流状に変わる様子がシミュレーションされた。
  3. 梅雨前線のシミュレーションでは、集中豪雨の例として、 2003 年 7 月 19 ~ 20 日に発生した熊本県水俣市の集中豪雨のシミュレーションを行ない、水平解像度 1km の実験でその詳細な構造をシミュレーションした。また、本年度の沖縄県で梅雨期に観測された豪雨システムについての実験を水平解像度 500m で行ない、中間規模低気圧の中にこれまで知られていなかった小低気圧が形成される様子を再現した。
  4. 台風については、沖縄付近に停滞した台風のシミュレーションを行ない、その中に形成された降雨帯の詳細な構造と降雨帯の降水強化における雲物理過程を示した。

<達成度>

  1. CReSS の性能は、ベクトル化率、並列化率とも十分達成された。(達成度 100 %)
  2. 筋状雲の実験では、対流が一般流の方向にロール状からセル状に変化する様子が示されたのは予想以上であった。今後さらに高解像度での実験を行ないたい。(達成度 70 %)
  3. 梅雨の実験では集中豪雨が再現されたことと、中間規模低気圧の中にこれまで知られていなかった小低気圧が形成されることを示したことは新しい。(達成度 50% )
  4. 台風の実験では降雨帯の降水強化過程を示した。(達成度 40 %)

総合的にモデルの性能は十分で、計画した内容についてはおおむね実施できたと思われる。