平成15年度地球シミュレータ共同プロジェクト利用報告会

利用責任者名 : 日比谷 紀之 (東京大学大学院 理学系研究科)

共同プロジェクトテーマ : 海洋中における乱流拡散のパラメタリゼーションに関する研究

PDF 発表資料 (1.16MB)

発表要旨

1.プロジェクトの目的

気候変動の予測に不可欠な海洋大循環モデルの高精度化に向けて、海洋中・深層における乱流拡散係数のグローバルな空間分布を明らかにする。そのため以下の数値実験を実行する。

  1. 内部潮汐波のグローバルな空間分布の数値シミュレーション
  2. 海洋内部波スペクトル内におけるエネルギーカスケードダウン過程の数値実験

この二つの数値実験の結果に基づき、海洋の各地点で励起される内部潮汐波から乱流拡散スケールまでカスケードダウンしていくエネルギー量を定量的に見積もることにより、乱流拡散係数のグローバルなマッピングを行う。

2.今年度当初の計画

海洋中・深層の乱流拡散過程の最も重要なエネルギー供給源である内部潮汐波エネルギーのグローバルな空間分布を、3次元数値シミュレーションを通じて明らかにする。

3.今年度得られた成果、および達成度

<成果>

現実的な海底地形および潮汐フォーシングを組み入れた3次元数値シミュレーションを実行することにより、内部潮汐波エネルギーのグローバルな空間分布の予測に成功した。

さらに、この数値シミュレーションの結果と本研究グループが世界各海域で実施してきたスモールスケールの流速シアー強度の観測結果を統合することにより、ラージスケールの内部潮汐波エネルギーとスモールスケールの乱流拡散係数とを関係づける ” 経験式 ” を求めた。この ” 経験式 ” に基づき、海洋中・深層の乱流拡散係数のグローバルな空間分布を世界に先駆けて提示した。

<達成度>

今年度は、内部潮汐波の数値シミュレーションの結果と海洋観測から導いた ” 経験式 ” に基づいて、乱流拡散係数のグローバルな空間分布を提示した。この乱流拡散のパラメタリゼーションの検証および精度向上のために、来年度以降に次の課題が残されている。

  1. 海洋内部波スペクトル中のエネルギーカスケードダウン過程の数値実験に基づく、内部潮汐波エネルギーと乱流拡散係数を関係づける ” 経験式 ” の理論的検証
  2. 海洋観測(長期係留系データ、人工衛星海面高度計データ)との比較を通じて、内部潮汐波のグローバルモデルの精度向上