平成15年度地球シミュレータ共同プロジェクト利用報告会

利用責任者名 : 高橋桂子 (海洋科学技術センター 地球シミュレータセンター)

共同プロジェクトテーマ : 地球シミュレータ仕様・全球・非静力・大気海洋結合モデルの開発

PDF 発表資料 (1.69MB)

発表要旨

1.プロジェクトの目的

気候変動予測を行う際には,結合モデルが不可欠であることは周知である。全球的な気候変動機構が各領域の気候へどのような影響を与えるか,またその逆に,領域限定的な激しい気象現象や気候変動の継続が,どのように全球の気象や気候の変動に影響を与えるのかを明らかにしてゆくことは,科学的,学問的にも,社会的インパクトにおいても,大きな要請と高い関心がある。これらの要求事項を満たすためには,シミュレーションの高解像度化は,ひとつの基本的な必要事項である。さらに,高解像度の時間的,空間的スケールの現象を,全球上でシミュレーション可能な,非静力・大気海洋結合シミュレーションコードを構築する必要がある。このようなシミュレーションを可能とする計算機環境は,現時点において,地球シミュレータ以外には存在しない。

本プロジェクトでは,地球シミュレータ上でのみ可能となる,領域限定の現象と大域的な現象の相互影響による気候変動解析を可能とするため,雲や,詳細な混合過程を解像でき,かつ計算効率の高い,全球・非静力学・大気,および海洋大循環シミュレーションコードを開発する。そのコードによる気候変動の再現と検証,解析を行うことにより,気候変動機構の解明に貢献することを目的とする。

2.今年度当初の計画

(1) 全球・非静力学・大気大循環,および海洋大循環の各シミュレーションコードのプロトタイプをスクラッチから構築する。

  1. 上記コードの仕様決定とコーディング,ベンチマークテストの実施および物理的性能評価。
  2. 保存型セミラグランジュ法の導入と実装。物理量の保存性の検証と精度評価。
  3. 物理過程のプロトタイプの導入,実装と物理的性能評価。
  4. プロトタイプの計算性能最適化とその評価,および陰的解法の並列計算性能評価。

(2) 全球・非静力学・大気海洋結合シミュレーションコードのプロトタイプの構築。

  1. 高解像度の大気海洋結合に向けた大気海洋相互作用モデルの検討。
  2. 大気海洋結合における,計算効率の高い並列化手法の検討。

3.今年度得られた成果,および達成度

<成果> (上記の番号と対応させて表示)

(1) 全球・非静力学大気および海洋大循環の各コードをスクラッチから構築し,力学過程と物理過程を導入したプロトタイプとしてのシミュレーションコードを,ほぼ完成した。

  1. 鉛直1次元の波の伝播特性,2次元浅水方程式に対するベンチマークテスト,および3次元の山岳波伝播テストの基礎的検証テスト行い,従来の結果と遜色のないことを示した。
  2. CIP 法を考慮した保存型セミラグランジュ法を実装し,保存性,計算精度を検証した。
  3. MM5 の物理過程をベースとした物理過程(積雲パラメタリゼーション,雲物理モデル,放射スキーム等)を,本コード上に,加筆実装を完了した。
  4. 力学計算部の計算性能最適化により,並列化率 99.99 %,ピーク性能比 65.2 %を達成した。

(2) 大気海洋相互作用における交換運動量におけるうねりや波の効果を,粒子法および C-CUP 法により定量的に評価した。

<達成度>

現時点において,本年度の当初計画の約 85 %を達成した。予定通り,今年度中に,全球・非静力学・大気,および海洋大循環シミュレーションコード,およびそれらの結合コードのプロトタイプを完成できる予定である。今後 3 ヶ月間は,大気,海洋各コードの物理的性能の検証と評価を重点的に行うと共に,格子系の部分的詳細化についての検討も行う。同時に,計算性能についての最終的な最適化チューニングを行い,本プロジェクトで開発したコードによる計算性能を詳細に検討,評価する。