平成15年度地球シミュレータ共同プロジェクト利用報告会
利用責任者名 : 南 一生 (高度情報科学技術研究機構)
共同プロジェクトテーマ : カーボンナノチューブの特性に関する大規模シミュレーション
発表要旨
1.プロジェクトの目的
カーボンナノチューブはナノテクの基幹材であり、その特性把握は激しい国際競争となっている。本研究では、技術的に難しいナノスケール実験に代わり、地球シミュレータを利用する大規模シミュレーションにより、産業界などが必要とするカーボンナノチューブの基本特性を明らかにするものである。さらに高品質ナノチューブの生成、ナノチューブの改質・加工、新物質創製という応用プロセスシミュレーションを通じて新先端技術開発に関する基本情報を提供することができ、しかもそれらを戦略的知的財産として構築することにより我が国のナノテクノロジの国際競争力を確保する意義がある。
2.今年度当初の計画
ナノチューブの熱・機械的特性に関る研究として、ナノチューブ加工の基準となるナノチューブ等の機械的強度、例えばヤング率、融点等について、多原子系の第一原理分子動力学等の大規模シミュレーションにより求める。次世代集積回路デバイスへ応用性に関する特性把握として、新しいナノチューブ加工・改質工程法の提案、ナノチューブと周辺材料の接合等における電子物性 ( 接合特性 ) について把握する。新機能付加に関する特性把握として、ナノ炭素の加工、応用特性等に関する研究、内包型ナノチューブ(ピーポッド)等の機能性に関わる研究を実施する。その他ナノチューブの物性制御合成法に関する特性把握、第一原理超大規模シミュレーションによるナノ構造物性解析を実施する。
3.今年度得られた成果、および達成度
<成果>
カーボンナノチューブの引っ張り・圧縮・ねじりに対する機械強度特性シミュレーションを、量子計算による実用スケール(世界最大)で実施し、ダイヤモンドの2倍の強度を持つ事が確認された。また長時間シミュレーションにより、2次座屈を含むカーボンナノチューブの座屈モードの様子を世界で初めて捉える事ができた。内包型ナノチューブ(ピーポッド)等の機能性に関わる研究として、ナノチューブより強度が高いと考えられていたピーポッドの圧縮強度をシミュレーションし、予想に反して強度が低くなる事を明らかにし、またそのメカニズムを解明した。次世代電子集積回路に向けた新しいナノチューブ加工法に係わり、混合状態で製造される金属的・半導体的ナノチューブを、それぞれに選別する方法に付いて一つのアイデアを提案した。ナノチューブの応用特性等に関する研究として、カーボンナノチューブが超高速スイッチングデバイスとして利用可能性がある事が示された。本計算は、時間依存シュレディンガー方程式を解いた長時間シミュレーションとしては、世界最長である。
<達成度>
今年度当初に挙げた5つの分野の内、本年度の第3四半期である現時点で3つの分野に付いて3に示した成果を得る事ができた。また残りの2つの分野については、コードの最適化を進めた。現時点での成果として当初の目標はほぼ達成できていると考える。