平成15年度地球シミュレータ共同プロジェクト利用報告会
利用責任者名 : 立木 昌(物質・材料研究機構)
利用責任者所属 : 物質・材料研究機構
共同プロジェクトテーマ : テラヘルツ発振超伝導素子に関する大規模シミュレーション
発表要旨
1.プロジェクトの目的
テラヘルツ( THz )波は光とミリ波電磁波の間の未開拓領域であり、医療診断、環境センシング、大容量高速通信等の多数の新規分野に応用が期待されている。テラヘルツ波の実用化の課題は、使い易い連続テラヘルツ波発生素子の開発であるが、現状のレイザー法による素子ではまだ能力不足である。高温超伝導体はそれ自体がジョセフソン結合系を形成しており、テラヘルツに振動数領域をもつジョセフソン・プラズマというシャープな励起状態を有する。定電流・定電圧をかけることにより、acジョセフソン周波数と共鳴した強い発振が起き、 連続テラヘルツ波を高出力に放射する ことが期待されている。本素子の設計には、強非線形方程式を多数の空間・時間メッシュにより解く大規模シミュレーションが必要であり、地球シミュレータの使用が必須である。以上より大規模シミュレーションによるテラヘルツ発振超伝導素子に関する研究を目的とする。本研究成果は、テラヘルツ発振のみならず、光通信の情報量の増大、ひいては超高速、低電力計算機の開発、ナノテクノロジーへも貢献することが期待できる。
2.今年度当初の計画
(1) 14 年度の結果に基づく解析コードの改造・チューニング
解析アルゴリズム(結合素子境界接合法等)の改造、再度のチューニングを行う。
(2)テラヘルツ発振条件発見のための多数回探索計算を以下の条件を考慮し実施する。
3.今年度得られた成果、および達成度
<成果>
(1)解析コードの改造・チューニング:現象があまりにも複雑なため、単純形状なプロトタイプでの探索計算を優先: 10 ~ 20nodes 程度で計算できるように調整した。
(2)テラヘルツ発振動条件発見のための多数回探索計算により、世界で初めて、高温超伝導体素子のテラヘルツ発振条件を発見した。 物理的な新たな知見として、
(A) 新しい発振メカニズムを発見 : ランダム運動する vortex がコヒーレントな電場・磁場を発生する
(B) 最適発振条件を発見 : レーザー法に比べ 103倍高い電磁波出力が得られる発振条件
( 3)解析結果を基に、実験グループ(4つ: NIMS 、筑波大等 )が実験を開始した。
<達成度>
今年度当初に挙げた上記計画に対し、3四半期である現時点で以上に示した成果を得ることができた。現時点での成果として当初の目標はほぼ達成できていると考える。