平成15年度地球シミュレータ共同プロジェクト利用報告会
利用責任者名 : 大村 善治 (京都大学 宙空電波科学研究センター)
共同プロジェクトテーマ : 宇宙環境シミュレータ
発表要旨
1.プロジェクトの目的
これまで、宇宙プラズマシミュレーションは、衛星観測により発見された様々なプラズマ現象の詳細解析用ツールとして主に用いられてきたが、本研究課題では、それを発展させた形で、宇宙開発・宇宙利用に不可欠な飛翔体環境の定量理解とその宇宙技術開発へのフィードバックを目指し、工学的かつ実際的な宇宙仮想実験が出来る数値チェンバーである「宇宙環境シミュレータ」のプロトタイプ構築を目標とする。この試みにより、これまでの宇宙プラズマ物理学の深化のための学術的なシミュレーションから、 将来のエネルギー問題の解決策として検討されている宇宙太陽発電衛星等、 将来の宇宙利用・技術開発に対して基礎的データを得ることができるシミュレーションへの質的変換をはかる。
2.今年度当初の計画
コードの最適化:各コードの領域分割モデルを完成させる。粒子系コードでは、中央の核となる領域には非構造格子で形成された飛翔体物体を導入し、それを囲む領域は一様格子で形成され飛翔体以外の領域はプラズマ粒子で満たす。流体コードでは、任意の太陽風パラメータを初期・境界条件として扱えるコードに改良する。
実用研究:(1)イオンエンジンに関する研究を行う。地球の磁力線に垂直方向に人工的に打ち出される大量のイオンによって、宇宙空間の環境がどのような反応を示すかを明確にし、飛翔体への影響を考慮する。ある程度現象を予想してから大規模計算を実行するため、その予備実験を行う。(2)太陽フレアに伴う磁気圏の反応を明確にし、電磁粒子コードを用いた計算との融合を図る。
3.今年度得られた成果、および達成度
<成果>
電磁粒子コードでは、 3 次元電磁粒子コード( EM3D )において、ベクトル化率は 97.115% を実現し、 125 ノード使用時における並列化率は 99.9905% 、並列化効率は 91.39% を達成した。 MHD コードでは、 MPI を用いた並列計算において、 1024 プロセッサ並列時にベクトル化率 99.74% 、並列化率 99.9949% 、 1 台あたり 4311Mflops ( MPI Program Information での測定値)という高い計算効率を達成した。イオンエンジンに関しては、周期境界条件の下での2次元実験を行い、噴出されたイオンのエネルギーが、静電ポテンシャル構造を通じて電子に供給され、初期エネルギーの100倍に達する高エネルギー電子が、電子の旋回運動時間という短時間で生成されることが分かった。また、 MHD コードでは、 2003 年 10 月末に起きた環境観測技術衛星「みどり2」の故障原因を探るべく、太陽風観測衛星「 ACE 」で実際に観測された太陽風データを入力値として地球を取り囲む宇宙環境のグローバルシミュレーションを行い、電磁粒子シミュレーションに取り入れるべき条件を与える結果を取得した。
<達成度>
静止衛星軌道上での背景プラズマパラメータを仮定した場合、宇宙環境シミュレータとして目標としていた 1Km3 の電磁粒子プラズマシミュレーションを可能とするためには、現コードでは 512 ノードすべてを使用する必要がある。割り当てられている計算ノード時間積の範囲において現実的なシミュレーションを行うためには、さらに 2 倍程度の高集積化(大粒度化)が必要である。そのためには、主記憶の利用効率を向上させ 128 ノードまたは 256 ノードによって上記目標を達成する必要がある。この目標は LISTVEC オプションを利用することにより年度内にコードの作成を完了する。この新方法が完成する前に、2次元での計算を行ったことは、本計算に向けての予備実験として、特に格子点数や粒子数などのパラメータの決定に有用となった。今後は、生成された高エネルギー粒子が、どのような影響を衛星本体に与えるかを明確にしていく。 MHD コードでは、任意の太陽風のパラメータを初期・境界条件として取り入れられるように改良できたため、実際の衛星データを利用することが可能となった。静止軌道上で、どの領域にいた場合にもっとも太陽フレアの影響を受けるか、等を調べていく。