平成15年度地球シミュレータ共同プロジェクト利用報告会

利用責任者名 : 松元 亮治 (千葉大学 理学部物理学教室)

共同プロジェクトテーマ : 宇宙の構造形成とダイナミックス

PDF 発表資料 (3.40MB)

発表要旨

1.プロジェクトの目的

ビッグバンに始まる膨張宇宙の中で銀河や星が形成され、進化し、様々な活動性(X線放射、フレア、ジェット噴出など)を示すに至る過程を、天体への質量降着、磁気エネルギーの蓄積と解放の物理等を取り入れた大規模シミュレーションを通して明らかにしていく。特に重要なチャレンジは部分と全体を統合したシミュレーションである。以下の宇宙構造の各階層について、その上下層との相互作用を含めたシミュレーションを実施する。(1)ダークマターのダイナミックスによる銀河団と銀河の形成、(2)銀河のダイナミックスと進化、(3)重力天体への質量降着とジェットの形成、(4)太陽・恒星の活動性。

2.今年度当初の計画

(1)宇宙構造の骨格を作るダークマターのダイナミックスを適合格子法( AMR )にもとづくN体シミュレーションコードを用いて追跡する。このコードを地球シミュレータ向けにチューニングし、計算を実施する。(2)有限体積法の流体コードを用いて星とダークマターが作る重力ポテンシャル中での銀河ガス分布の時間発展を、超新星爆発による重元素放出の効果を含めて追跡する。(3)重力ポテンシャル中を回転するプラズマ円盤(降着円盤)の3次元グローバルシミュレーションを実施し、磁気乱流による角運動量輸送が円盤の進化とジェット形成に及ぼす影響を明らかにする。(4)天体磁気流体シミュレーション統合ソフトウェア CANS を移植し、太陽・恒星で観測される活動現象に適用する。

3.今年度得られた成果、および達成度

<成果>

AUSMDV 法に基づく流体シミュレーションコードをインプリメントし、宇宙初期に誕生した小さな銀河が衝突・合体を繰り返しながら大きな銀河に成長するというボトムアップシナリオに基づく大規模シミュレーション( 512^3 格子点)を実施した。銀河相互作用による重力場変化と超新星爆発による加熱過程を考慮したシミュレーションの結果、原始銀河ガスの重元素汚染過程を高い分解能で追跡することに成功し、大質量銀河の進化にとっても超新星爆発の効果が重要であることをはじめて示した。また、磁気流体統合コード CANS の移植を完了し、対流層からの磁束浮上、浮上磁気ループとコロナ磁場の相互作用、降着円盤からのジェット形成の3次元磁気流体数値実験を実施して予備的な結果を得た。

<達成度>

AMR 法に基づくN体シミュレーションコードはチューニング中で本計算をするに至っていないが、流体・磁気流体コードのチューニングは完了し、 512^3 格子点以上を用いたグローバルシミュレーションを開始した。特に、銀河進化シミュレーションでは超新星爆発が原始銀河ガスの進化に及ぼす効果を明らかにするという成果が得られつつある。