平成15年度地球シミュレータ共同プロジェクト利用報告会
利用責任者名 :荒川忠一 (日本原子力研究所 計算科学技術推進センター)
共同プロジェクトテーマ : 乱流の世界最大規模直接数値計算とモデリングによる応用計算
発表要旨
1.プロジェクトの目的
乱流コンソーシアムを形成して大規模計算による乱流研究を進め、基礎流れに対する世界最大規模の乱流直接数値シミュレーションを行う一方、乱流 LES モデルを用いた先導的な応用シミュレーションを実施し、翼周りの流れ場と空力騒音を詳細に解析する。従来の格子点数の不足により再現不可能であった物理現象の解明を試み、風車などの効率の向上や空力騒音の低減に向けた設計方法を提案する。
2.今年度当初の計画
基礎班として、「1:格子点数 4096 の 3 乗のDNSの実行」「2:格子点数 2048 の 3 乗,及び 4096 の 3 乗の計算結果の解析及び乱流場の可視化」「3:スカラー場計算プログラムの組み込み」「4:平板ポアズイユ乱流の ES 上での大規模 DNS のための種々の数値スキームの比較検証、コード開発」「5:平行平板間乱流熱伝達の DNS 」「6:回転系一様乱流の大規模 DNS 」を掲げたが、ノード時間の制約から1および2を集中して行った。
応用班は、「 1:翼周りの流れの LES 」「2:回転翼およびチップ周りの流れの LES 」「3:タービン翼列干渉の LES 」「4:ダウンバースト時の航空機 LES 」「5:都市建築物の LES 」を計画したが、計算時間の制約から1および2を中心とした風車への応用研究に集中した。
3.今年度得られた成果、および達成度
<成果>
地球シミュレータ (ES) で作成した、格子点数 40963 に至る世界最大規模の非圧縮一様等方性乱流の直接数値計算 (DNS) のデータベースを組織的に解析し、乱流の小スケールにおける普遍的な統計法則について調べた。本年度は特に (1) エネルギースペクトル、 (2) 圧力、エネルギー散逸、エンストロフィのスペクトル、 (3) 速度の空間微分の PDF とモーメントについて、テーラーマイクロスケールに基づくレイノルズ数Rλ > 500 におけるスケーリングの新しい知見を得た。これらは全て ES 以前の DNS (格子点数 10243 以下)では発見することができなかったものである。
応用計算に関しては 3 億格子点数に及ぶ世界初の風車全体の LES (Large-Eddy- Simulation) ・騒音計算を実施し、流れ場と空力騒音を求めた。世界で初めて翼端渦から伝播する音波を直接に計算した。風車翼の回転に伴う翼端渦の構造を詳細に再現し、発生する音波の伝播を高精度にシミュレーションし、遠距離場で聞かれる音を予測した。渦の構造とブレードの圧力分布は実験と定量的に一致していることを確認した。これほど細かい計算格子において、 LES シミュレーションの格子依存性がなくなることを確認し、信頼性の高い計算が地球シミュレータによって可能であることが確認された。
<達成度>
格子点数 20483 までの乱流 DNS データ解析は順調に行え、上記のような成果が得られたものの、ノード数とノード時間の制限などにより、 512 ノードが必要となる世界最大規模 DNS データの解析が十分に行えたとは言えなかった。しかし効率よくデータを解析するノウハウを得ることはできたため、今後は順調にデータ解析が行えると考えられる。
また、平行平板間乱流の世界最大規模の高精度・高解像度の数値計算データベースを作成することは、割り当てられたノード時間では不可能であるが、平行平板間乱流の ES 用プログラムの開発は現在進行中である。
一方、風車ブレード付近で信頼性の高い応用計算を実現した。いくつかの国際会議で計算結果を発表し大きな話題を集めた。今後は外側の領域を中心に格子点数を 10 億点規模とし、風車の後流も詳細に解析しながら、洋上ウィンドファームの設計に役に立つ情報を提供したい。