平成15年度地球シミュレータ共同プロジェクト利用報告会

利用責任者名 : 荒川 忠一 (日本原子力研究所 計算科学技術推進センター)

共同プロジェクトテーマ : 大強度陽子加速器計画で用いられる核破砕水銀ターゲット内部の大規模並列流体シミュレーション

発表要旨

1.プロジェクトの目的

本研究テーマは日本原子力研究所と高エネルギー加速器研究機構が共同で開発している核破砕タイプの高密度中性子発生源である水銀ターゲットの開発に関するもので、最終目的は、水銀ターゲットの強度設計を援助したり、液体水銀内部で起こる現象を把握しターゲットの使用可能期間を延ばすことにある。シミュレーションに必要なデータは、設計を担当しているグループに提供してもらい、有効な計算結果が得られた場合、その結果は設計担当グループに還元され利用される。中性子散乱実験は、たんぱく質の精密な構造決定など、科学の様々な分野で利用されるもので、より高密度の中性子源の開発が待たれている。水銀ターゲットの開発はその要望に答えるもので、特に、ターゲットの使用可能期間を延長するという目的の為には地球シミュレータでなければ出来ないような、大規模な計算が必要となる。

2.今年度当初の計画

高密度の発熱に伴う圧力波伝播の解析精度を向上させるために、流体解析コードの差分スキームとして TVD スキームを導入する。その後、 TVD スキームを組み込んだ流体解析コードと構造解析コードとを弱連成によってカップリングすることで、液体水銀の圧力波伝播とターゲット容器壁の変形挙動との相互作用をシミュレーションすることで、容器壁の変形による液体水銀の圧力低下などのキャビテーションの発生可能性を評価し、気泡動力学モデルとの連成手法についても検討する。尚、水銀ターゲットの形状データは CAD データに基づく詳細モデルを準備するものとし、初期の圧力分布についても発熱密度分布に基づいた詳細な分布を与えるものとする。

3.今年度得られた成果、および達成度

<成果>

流体解析コードに新たに TVD スキームを組み込み、衝撃波管による検証計算によって、安定性を維持しつつ圧力波の不連続な波面をより高精度に計算できることを確認した。流体構造連成解析による圧力波伝播と容器壁の変形挙動の相互作用の計算によって、容器壁の変形に伴う液体水銀の圧力低下が生じうることを確認した。 100 万メッシュ規模の問題を地球シミュレータで 32+1 分割(流体 32 、構造1分割)と 64+1 分割で計算し、ベクトル演算率が 98% 、並列化率が 95% というパフォーマンスを得た。

<達成度>

1000 万メッシュ規模以上の大規模問題については不十分であるが、中規模以下の問題については概ね達成できた。