平成15年度地球シミュレータ共同プロジェクト利用報告会
利用責任者名 : 町田昌彦 (日本原子力研究所 計算科学技術推進センター)
共同プロジェクトテーマ : 超伝導ナノファブリケーションによる新奇物性と中性子検出デバイス開発のための超伝導ダイナミクスの研究
発表要旨
1.プロジェクトの目的
最近発達してきた超伝導ナノファブリケーションのテクニックにより全く新しいタイプの超伝導デバイス開発の可能性が開けてきた。これを受けて本プロジェクトでは、以下の 3 つの新しい超伝導デバイス開発に関連したシミュレーション研究を行う。1)中性子飛来の時系列を検出するデバイス開発のための研究。 2)1)のテーマを基礎からサポートし、かつ新しい超伝導物理現象を探索する。主に熱と超伝導ダイナミクスの相関をシミュレーションする一方、ナノスケール超伝導体の微視的状態も研究対象とする。 3)高温超伝導体と従来型金属超伝導体とをモザイク状に配置することで得られる量子ドットデバイスのシミュレーション研究。 テーマ1)では、コンソーシアムの複数の実験グループと協力し、高精度の中性子検出デバイスを提案するための試行シミュレーションを実施する。テーマ2)では、一般的に高温での超伝導状態のダイナミクスを調べる一方、微視的状態を明らかにするため、ナノ超伝導体の基底状態の探索を行う。 テーマ3)では、量子コンピュータ・キュビットモデルとして有力視されている異なる超伝導体界面に現れる縮退半磁束のダイナミクスを大規模シミュレーションする。
2.今年度当初の計画
平成 15 年 5 月~ 7 月 : プロトタイプコードの開発及び改良と地球シミュレータ上でのベクトル及び並列チューニングを行う。既に別機(原研所有の VPP5000 及び SR8000 )でのベクトル並列チューニングは終了していることから地球シミュレータの性能を引き出すチューニングに集中する。また、並列乱数プログラムをテストしてプログラム内に埋め込み実シミュレーションのテストを行う。 平成 15 年 8 月~ 16 年 3 月:テーマ1)2)3)に対し随時、大規模シミュレーションを実施する。テーマ1)に対しては、 2 次元に限りなく近い薄膜領域からシミュレーションを初め、次第に厚さを増し、 3 次元問題のシミュレーションに移行する。テーマ2)では、準 2 次元系の計算を行い、計算の物理的意義を検討し、同時に計算領域の拡大、そして 3 次元系への大規模化を順次図る。テーマ3)では、 2 次元系の計算のみ行う。
3.今年度得られた成果、および達成度
<成果>
今年度得られた成果は、大きく分けて以下の 4 つに分けられる。1)中性子検出器のためのシミュレーション(テーマ1)では、熱拡散による非平衡超伝導現象の大規模シミュレーションに成功し、検出時間分解等に対するデータを得ることができた。2)ナノスケール超伝導体の微視的計算において(テーマ2)は、 d-p モデルの厳密対角化を行い 180 億次元の疎行列の最低固有状態を得ることに成功した(世界最大規模の問題である)。3) 3 つのテーマを研究するための共通プロトタイプコードのチューニングを実施し、 512 ノード利用時に 18 テラフロップス以上の性能を引き出すことに成功した。4)1)プログラムの HPF 化も進め、 128 ノード利用時に対MPI比 90 %以上の性能を引き出すことに成功した。
<達成度>
今年度、コード開発及びチューニングは当初の予定通り進み、達成度は 100 %であるといえる。一方、シミュレーションについては、 3 テーマに対し、大規模シミュレーションを実施し、当初の予想を超える興味深い結果を得ることができたシミュレーションもあった他、新しく取り組むべきテーマも見つかるなど、満足できる結果を得ることができたと考えている。今後は、大規模シミュレーションをさらに系統的に実施し、結果の評価を確定する必要があると考えている。