平成 15 年度地球シミュレータ共同プロジェクト利用報告会

利用責任者名 : 蕪木 英雄 (日本原子力研究所 計算科学技術推進センター)

共同プロジェクトテーマ : 放射線照射に伴う材料の物性変化と破壊の微視的シミュレーション

発表要旨

1.プロジェクトの目的

原子力材料において解決すべき重要な問題として応力腐食割れと照射硬化がある。これらの問題に対して、金属強度と照射欠陥についての基本的問題を微視的な立場から解決することが必要とされる。そこで、以下の転位(結晶の塑性変形に主要な役割を果す格子欠陥)移動に関する素過程と多結晶体の破壊の2つのテーマについて大規模数値シミュレーションを駆使した研究を実施する。

第一原理計算手法による体心立方結晶中の転位の移動及び水素の影響シミュレーション

体心立方( BCC )結晶に属する Mo および Fe 結晶内の転位の構造、転位が移動するために必要な力(パイエルス応力)を第一原理計算により求める。さらに、 Fe に関しては水素(材料の脆化に関係し、応力腐食割れの原因の一つとされている)を投入し、そのダイナミックスを追うことで不純物と転位の相互作用について解明し、鉄の水素に対する機械的特性の変化に関する知見を得る。

経験ポテンシャル分子動力学法による多結晶金属の塑性、破壊現象シミュレーション

通常の金属材料は、単結晶の粒が集合した多結晶体である。応力腐食割れではこれら結晶の粒界において破壊が進行しており、多結晶体の塑性、破壊の微視的過程についての知見が求められている。ここでは原子レベルのモデル化により、多結晶体及び照射による欠陥のシミュレーションを実施しマクロな機械的性質が出現する微視的過程を明らかにする。

2.今年度当初の計画

第一原理分子動力学法では、 Mo および Fe 中のらせん転位原子構造の特定とパイエルス応力の評価をする。 経験ポテンシャル分子動力学法では、 LJ ポテンシャルプログラム (MDVP) をベースとしたチューニング、 EAM ポテンシャルプログラムの実装、及びこれらを使って単結晶 ( 単純な粒界を含む ) のシミュレーションを実施する。

3.今年度得られた成果、および達成度

<成果>

第一原理分子動力学法において、転位の移動を計算するために Mo のフォノン分散計算 (250 原子、 k 点 6x6x6) を実施してシミュレーションの信頼性チェックを完了し、従来の計算 (54 原子 3x3x3 、 k 点 3x3x3) に対し格段に精度が向上していることを確認した。

<達成度>

第一原理分子動力学法: 達成度 : B

VASP コードの地球シミュレータへの移植、ベクトルチューニングを完了した。しかし、当初計画より並列化チューニングが遅れており年度内は Mo のみの転位芯構造の計算が出来る見込みである。

経験ポテンシャル分子動力学法: 達成度 : C

第一原理計算を先行させたので、 MDVP コード準備 ( チューニング ) が大幅に遅れた。年度内は LJ ポテンシャルによるモデル計算のみ実施の見込みである。