平成15年度地球シミュレータ共同プロジェクト利用報告会

利用責任者名 : 鳥海 光弘 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科)

共同プロジェクトテーマ : 計算地球物質科学による地球内部物質の物性評価計算

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発表要旨

1.プロジェクトの目的

本研究プログラムは、地球を構成する鉱物や岩石が地球内部の温度・圧力および水蒸気圧のもとでどのような力学的性質をとるのかについて計算地球物質科学的に求めようという計画である。とくに1,地球深部を構成するペリクレース、 MgSiO3 ペロブスカイトの転位構造、転位運動、自己拡散係数、粘性係数の下部マントルにおける変化、2,地球内部を構成する鉱物の不純物としての水の状態、および物性計算、3,化学反応、物質移動、流体移動、クラック形成などを含む剪断帯の力学挙動に関する厳密計算などを目標としている。このため、第一原理計算による分子動力学法を鉱物中の水に適用し、その状態変化を明らかにするとともに、2体力による分子動力学を駆使して自然系に近い転位密度の転位構造、転位運動を地球内部の高圧高温状態で明らかにする。また精密な拡散係数を決定することで下部マントルの粘性率を明らかにする。第3には鉱物の脱水・吸水反応を含み、水が移動する剪断帯の流体分布の変化と対応する構成則をミクロな粒子系の物理過程から計算実験で求める。

2.今年度当初の計画

  1. Mg Oの空孔と転位構造および運動の大規模精密計算科学による研究。
  2. 多数内部自由度をもつ剪断帯の厳密計算コードの開発。
  3. 第一原理分子動力学法プログラムの地球シミュレータ向け最適化を行う。
  4. 超多体分子動力学法をもちいて、層間水をもつ粘土鉱物中の水の構造、力学特性を評価するコードを開発する。

3.今年度得られた成果、および達成度

<成果>

最大ノードでの100万体分子動力学法による MgO の自己拡散係数の温度圧力依存性の精密計算に成功。この結果70 GPa において拡散係数が最も小さくなること,温度効果を考慮すると地球下部マントルでは50 Gpa 付近までほぼ一定の拡散係数,つまり粘性率で,その後140 Gpa まで急激に拡散係数は増加し,粘性率は減少し,コアマントル境界で2桁ほど減少することを示した。これは下部マントルでの対流様式に大きな変更を要請する。

非静水圧条件における直接的な拡散型変形実験を分子動力学法により MgO 結晶において行うコードの開発を行っている。これは現在まで結晶が安定に変形しない困難に直面している。

第一原理分子動力学法による結晶内水の構造計算は地球シミュレータへの移植進行中であり,本年度中には計算を実質的に進めたい。

<達成度>

すでに述べたように,150 Gpa ,6000度にいたる MgO 結晶の自己拡散実験に成功しており,その結果は下部マントルにおける粘性率の急激な低下をみた。他は進行中である。