■発表要旨
1.プロジェクトの目的
平成14年から5ヵ年計画により、大気海洋結合モデルの各要素モデルの高解像度化を図る。第一段階(1~3年目)として、これら要素モデルを結合して中解像度の大気海洋結合モデルを開発し、IPCC SRESシナリオ、濃度安定化シナリオについてのアンサンブル温暖化予測を行う。第二段階(4~5年目)として、さらに要素モデルの高解像度化を図り、結合モデルの開発に挑戦する。これらにより、IPCCに科学的に貢献する。
2.今年度当初の計画
- 結合モデルによる温暖化予測
中解像度結合モデルCCSM3(大気150km、海洋100km)により、IPCCが要請する次の温暖化アンサンブル予測計算(1~6)等を行う。計算結果をIPCCに送付するとともに、結果を解析して論文を作成する。 - 大気モデル、海洋モデルの高解像度化
第4年目以降に向け、大気要素モデルでは統合大気モデルWACCM(特に鉛直解像度の向上)、海洋モデルPOPでは0.1度の高解像度化(特に、グリッド格子の改良のための3極化)の検討を行う。また、温暖化が日本海に及ぼす影響を検討するため、15年度までに開発した水平格子間隔1/12°および1/36°の日本海領域海洋循環モデルを高精度化し、日本海への温暖化影響を検討する。
3.今年度得られた成果、および達成度
<成果>
- 結合モデルによる温暖化予測
以下のシナリオ(1~6)について、中解像度モデルにより3メンバーアンサンブル予測計算を予定通り無事完了した。計算結果は、IPCC(PCMDI)に送付するとともに、来年度上旬の論文投稿締切りに間に合わせるべく結果を解析した。また、速報結果については様々な報告会で発表した(11月29日プレス発表)。1.20世紀気候再現計算(1870年~2000年)、2.SRES AIBシナリオ+名目750ppm安定化シナリオ、3.SRES B1シナリオ+名目550ppm安定化シナリオ、4.名目750ppm-名目550ppmオーバーシュートシナリオ、5.370ppm Committedシナリオ - 大気モデル、海洋モデルの高解像度化
第4年目以降に向け、中解像度モデルの問題点を検討・整理し、1.気候の自然変動(Natural Variability)の再現性の向上、2.日本列島やグリーンランド周辺(熱塩循環)の海洋流動の再現性向上が最重要課題であることをあきらかにした。この問題解決のため、詳細な大気化学過程が含まれる統合大気モデルWACCM(特に鉛直解像度の向上)の最適化に着手した。また、全球海洋モデルPOP(1/10°)についてグリーンランド周辺の計算格子の歪を改善するため、北半球に2つの極(南極も入れて全3極)を持つモデルについて検討した。15年度に実施した高精度太平洋循環モデル(1/12°)の結果を解析し、北西太平洋の主要海峡通過流量が約5%以内の誤差で再現されこと、海峡付近の海底地形の高精度表現が重要であることが確認された。また、日本海への温暖化影響については、結合モデルによる温暖化予測結果を解析し、日本海影響を検討するための境界条件の整理を行った。
<達成度>
- 結合モデルによる温暖化予測
計算は予定通り完了(100%)。現在英文論文を作成中。 - 大気モデル、海洋モデルの高解像度化
高解像度化すべき点、解決するべき方法について目処が得られ、地球シミュレータでの最適化に着手した(現在40%)。論文作成と並行して、年度末までに、日本海への影響検討も含め、当初計画を達成する予定である。