■発表要旨
1.プロジェクトの目的
- 高精度・高分解能気候モデルの開発を目指し、台風等を世界規模で再現できる20kmメッシュ全球気候モデル(GCM)及び集中豪雨等を広域で再現する数kmメッシュ雲解像大気モデル(NHM)を開発する。
- これらの高精度・高分解能気候モデルを用いて、地球温暖化を予測する数値実験で得られた海面水温を境界条件とするタイムスライス実験を行うことにより、地球温暖化が台風や集中豪雨等に与える影響を調べる。
2.今年度当初の計画
GCMグループでは、昨年度までに、計算スキームの改良による高速化、物理過程の改善、及び、観測データによる検証により、気候を精度よく再現する20kmメッシュ全球大気モデルのプロトタイプを開発した。今年度はこのプロトタイプモデルを用いて、温暖化予測実験から得られた地球温暖化時の海面水温を境界条件として、タイムスライス実験を行い、地球温暖化が台風や梅雨等に与える影響を調べる。
NHMグループでは、昨年度までに開発したプロトタイプモデルの解像度を5kmとして、現在気候と温暖化時の気候における6月と7月について10年間にわたる計算を地球シミュレータで実行する。現在気候についてはGCMから初期値・境界値を与えて現在気候を再現し、モデルの精度を検証する。さらに、地球温暖化時の東アジア域の梅雨前線に伴う降水の特性(降水分布・降水量・降水強度等)の変化を調べる。
3.今年度得られた成果、および達成度
<成果>
GCMグループでは、現在気候と温暖化時の気候について10年間にわたる計算を行い、熱帯低気圧の変化について調査した。その結果、温暖化すると、地球全体の熱帯低気圧の年間発生数は、現在気候より減少するが、最大風速の大きな熱帯低気圧の相対的割合は増加することがわかった。
NHMグループは、現在気候と温暖化時の気候について6月と7月(10年分)の計算を実行した。梅雨期の東アジアでは、温暖化時の気候の場合、梅雨前線が北上せず、7月まで持続する傾向が強まるために、南日本で降水が強まり北日本から朝鮮半島では降水が弱まることが分かった。
現在、計算結果の解析を行い、得られた成果は、国内外の研究集会で発表するとともに、論文にまとめ、学会誌等に順次投稿している。
<達成度>
地球シミュレータセンターのご協力により計算資源を年度前半部分に集中的に使用させて頂き、今年度予定したIPCCの第4次報告書(AR4)貢献に向けた所定通りの成果を得た。