■発表要旨
1.プロジェクトの目的
気候変動に関連する大気及び海洋の変動プロセスを理解し、それらの予測可能性に関する新たな知見を得ることを目的とする。具体的には、大気海洋結合モデルを用いて、インド洋ダイポール現象やENSOに代表される大気海洋相互作用現象の詳細なメカニズムを解明し、これらによる全球的及び局所的な気候変動の発生過程を明らかにする。また北太平洋域の超高解像度シミュレーションを行い、特に黒潮の変動とそれが日本の沿岸域における海況変動に及ぼす影響について調べる。
2.今年度当初の計画
- 高い分解能を有するT319L60の大気モデル、水平0.5度、鉛直30レベルの分解能を有する海洋モデルを結合して50年間の積分を行う。得られた結果を用い、熱帯域の大気海洋結合現象を中心とした短期気候変動に関する解析を進める。また、この実験を基本として、初期値に様々な微小擾乱を加えたアンサンブル実験を2~3ケース行い、計算結果の初期値依存性やモデル特性を理解する。
- 水平1/30度、鉛直31レベルの分解能を有する海洋大循環モデルを用いて、1990~1994年までの再現実験を行う。外力としてはNCEP/NCARの6時間ごとの再解析データを用いる。
3.今年度得られた成果、および達成度
<成果>
- 中解像度の結合モデル実験の解析より、インド洋ダイポール現象がENSOと独立した結合現象であること、またダイポール現象によって生じる東部インド洋から南米にかけてのテレコネクション、バリヤレイヤーが夏季モンスーン・オンセットに及ぼす影響を同定することに成功した。また大気海洋両モデルの結合部の物理過程を修正することにより、西太平洋の乾燥バイアスを除去し、過去に発生したENSOの予測可能性を向上することに成功した。更に高分解能のT159L31の大気モデル及び水平0.5度、鉛直31レベルの海洋モデルを用いた結合モデル実験のテストが完了した。
- 1日おきのNCEP/NCARの再解析データにより、水平1/30度、鉛直31レベルの海洋大循環モデルを2000年から2002年まで駆動し、現在解析を行っている最中である。
<達成度>
- 高解像度の結合モデルの準備については支援SEの確保問題もあり、40%程度の達成度であるが、比較対象となる中解像度モデルの結果の解析についてはほぼ当初の目標を達成しており、現在多くの論文が学術論文誌に掲載済み或いは投稿中の段階である。またこれらの結果はCLIVARなどで国際的に高い評価を受けている。インド洋の大気海洋研究については Thomson Scientific により世界のトップにいることが9月27日にプレス発表された。
- 積分期間の予定を変更し2000年からの再現実験としたこと、MDPSの容量不足により積分期間が当初の予定の半分程度しか行えないことを除けば、年度内までには計画通りのことができる見込みである。