平成16年度地球シミュレータ研究プロジェクト利用報告会

利用責任者名 : 坪木 和久 (名古屋大学 地球水循環研究センター)

プロジェクトテーマ : 階層構造を持つ水循環システムの雲解像モデルを用いた高解像度モデリング

PDF 発表資料 ( 6.75MB)

発表要旨

1.プロジェクトの目的

   地球大気の水循環は、大規模スケールから積乱雲までの様々なスケールが階層構造をなす雲・降水システムによって特徴づけられる。本研究では、雲を詳細に表現しかつ雲スケールから大規模スケールまでを同時にシミュレーションすることにより、対象領域内の水循環に関わる現象を、対流をパラメタリゼーションすることなく、陽にシミュレーションすることを目的とする。これにより各スケールの水循環に果たす役割、メカニズム、実態、さらにスケール間の関係を明らかにする。

2.今年度当初の計画

本研究では雲解像モデルCReSS (Cloud Resolving Storm Simulator)を用いる。階層構造を持つ主要な水循環システムは、梅雨、台風、及び冬季の降雪システムで、これらの雲・降水システムを主な対象とする。具体的には以下の計画を実施する。

  1. 梅雨前線帯の降水システムの階層構造と、それに伴う集中豪雨の予測実験。
  2. 台風とそれに伴う降雨帯の実験。実際の台風のシミュレーション実験及びAFESのデータを利用した台風発生時のシミュレーション実験を行なう。
  3. 冬季寒気流中の降雪システムの実験。日本周辺域を対象とするほかにカナダの研究者と協力してカナダ五大湖およびカナダ東岸を対象とする。

3.今年度得られた成果、および達成度

<成果>

  1. 2004年の梅雨期から秋雨期にかけて、国内では多くの集中豪雨が発生した。これらのうち特に顕著であった新潟・福島豪雨についてシミュレーションを行なった。その結果、梅雨前線、前線帯小低気圧、さらにその小低気圧の南東端の降雨帯という階層構造と、その降雨帯の持続によって豪雨がもたらされたことを示した。
  2. 台風についても今年度は多くの事例が発生した。そのうちの強風災害をもたらしたT0418と、豪雨災害をもたらしたT0421、T0423のシミュレーションを行なった。これによりアイウォールやスパイラルバンドの形成とそれに伴う強風や豪雨の形成過程を調べた。また、AFESの計算結果にCReSSをネスティングし、西太平洋上における台風発生時の台風に伴う降水システムの形成実験を行なった。
  3. 降雪システムについてはカナダの研究者と協力して、五大湖上とその周辺域に発生する筋状雲についてのシミュレーションを500mの水平解像度で行ない、衛星画像にみられるような実際の現象に非常に近いものを再現した。

<達成度>

梅雨前線に伴う豪雨と台風については現時点でそれぞれ60%の達成度と考えている。降雪システムについてはかなり現実的な結果が得られたので80%の達成度である。