■発表要旨
1.プロジェクトの目的
東北日本および西南日本における地震発生過程のシミュレーションを行う。特に、繰り返し発生する南海トラフ巨大地震サイクルのモデリングを中心に、西南日本下に複雑な形状で沈み込むフィリピン海プレートの構造を含む3次元不均質場での、複数の断層の準静的・動的相互作用を考慮した地震発生過程のシミュレーション・モデルの開発を行う。
2.今年度当初の計画
- 準静的地震発生サイクルのシミュレーションでは、まずは、平面境界および弾性問題を扱い、東北日本や西南日本における実際のアスペリティーやセグメントに対応する摩擦パラメータ分布を与え、数百年の地震サイクルを計算する。次に、粘弾性媒質中でのグリーン関数を計算し、準静的地震発生サイクルミュレーションを実行する。
- 接触解析を用いたGeoFEM動的破壊伝播シミュレーションモジュールの計算精度検証を行い、領域を限ったモデルで開発する。これにはプレート形状に加え、有限要素(FEM)モデルの作成をソフトウェアCHIKAKUを用いて行う。
3.今年度得られた成果、および達成度
<成果>
最大の成果は、平面境界および弾性問題ではあるが、西南日本における南海トラフ沿いに発生する巨大地震発生サイクルの準静的シミュレーションで、予備的ではあるが、歴史上見られている破壊領域のセグメンテーション(東海・東南海・南海セグメント)化、およびその破壊の複雑な連動パターンの実現に成功した点が挙げられる。
次に、粘弾性媒質中での準静的地震発生サイクルのシミュレーションでは、マントルウェッジ内の粘弾性領域の効果を見るため、東北地方の2.5次元FEMモデルを作成し、グリーン関数を作成し、シミュレーションを実行した。作成に長時間要したが、フィリピン海プレートの3次元形状を含む、西南日本の粘弾性不均質FEMモデルはほぼ完成し、実際の地震発生サイクルシミュレーションに向けてグリーン関数の計算手法の改善を行えば、シミュレーションが実行可能な段階に来たといえる。
接触解析を用いた動的破壊伝播シミュレーションモジュールの開発では、その計算精度を確かめるため、差分法で計算されている平面断層での破壊伝播シミュレーションモデルを構築し、シミュレーションを実行した。その結果、計算精度は達成されており、FEMで開発した計算手法の有効性が確かめられた。
<達成度>
準静的地震発生サイクルシミュレーション
- 平面および弾性問題ではあるが、南海トラフ巨大地震の破壊領域のセグメント化および複雑な破壊の連動パターンの再現に成功した。今後さらに詳細解析を行う予定であるが、今年度の成果としては100%以上の達成度を与えられる。
- 粘弾性媒質問題では、東北地方の2.5次元FEMモデルによるグリーン関数を計算し、地震発生サイクルシミュレーションを実行した。西南日本の粘弾性FEMモデルの構築をほぼ終えたが、まだシミュレーションには至っていない。この点では、70%の達成度と評される。
動的破壊伝播シミュレーション
本年は、GeoFEM動的破壊伝播シミュレーションコードの計算精度の検証に重点を置き、非常に基本的な破壊伝播の問題を扱った。この点では目的は達成されて入るが、当初の実際的なモデルでの計算には至っていない点を考えると、50%の達成度と評される。