平成16年度地球シミュレータ研究プロジェクト利用報告会

利用責任者名 : 南 一生 (高度情報科学技術研究機構)

プロジェクトテーマ : カーボンナノチューブの特性に関する大規模シミュレーション

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発表要旨

1.プロジェクトの目的

 カーボンナノチューブ(以下、CNT)はナノテクテクノロジの基幹材であり、その特性把握は激しい国際競争となっている。本研究は、技術的に難しいナノスケール実験に代わり、地球シミュレータを利用する大規模シミュレーションにより、産業界などが必要とするCNTの機械的、熱的、電子的な諸特性を明らかにする。さらに高品質CNTの生成、改質・加工などの応用プロセスシミュレーションを通じて新物質・新機能創製に関する基本情報を提供し、しかもそれらを戦略的知的財産として我が国のナノテクノロジの国際競争力の維持確保を支援することも目的としている。

2.今年度当初の計画

 まずCNTの基本特性(CNT複合材創製等において必須となる)として、CNTの機械的特性を把握する。また、CNT応用として、1)高品質CNTの合成過程に関し、フラーレン構造からCNT合成過程のシミュレーション、2)次世代回路応用特性に関し、CNT高速スイッチング特性を予測するホットキャリアーの緩和時間シミュレーション、さらに3)新機能付加・新物質創製のためのナノ構造加工特性に関し、電子物性およびその金属依存性を明らかにするCNT金属接合構造シミュレーション等を行う。

3.今年度得られた成果、および達成度

<成果>

  基本特性)昨年度の単層CNT特性に比較して、本年度は2層CNTの機械強度特性シミュレーションを実施した。その結果、予想に反し、2層CNTの圧縮強度は単層CNTよりも弱く、単層CNTよりも短時間で座屈を起こす傾向があることを明らかにした。次にCNT複合材創製シミュレーションに向けてCNTバンドル(束)状態挙動を把握するファンデルワールス力を考慮したシミュレーションモデルを開発し、これまでのシミュレーション結果から、CNTバンドル内のCNT本数、配置に依存して、バンドル崩壊、変形(例えば、CNT断面が円から6角形になる現象)など興味ある現象の存在が予見される。 またCNT応用に向けたシミュレーションとして、1)高品質CNT合成の新たな方法およびCNT螺旋構造合成・制御法を探索するために、GSW理論(一般ストーン・ウェルズ理論)に基づく、炭素構造体形成モデル(並列化コード)を開発し,2個のフラーレン(C60)構造から炭素原子120の単層CNTを生成する形成経路を数種類、明らかにした。現在180炭素原子について実施中。2)CNT高速スイッチング特性では、格子へのエネルギー緩和は格子温度に依存するため、1000K、300Kの初期格子温度により計算した。300Kの計算では、200fs後にホットキャリアーから格子へのエネルギー緩和が始まる様子を観測でき良好なスイッチング特性が得られた。1000Kのシミュレーションでは、温度揺らぎの効果が大きすぎて格子への緩和を明確に特定できなかった。さらに低温領域の計算を現在進行中。3)第一原理計算コードを最適化し、306原子からなるCNT金属接合構造の原子構造最適化および電子状態シミュレーションを可能にした。これまで第一段階として電極材料であるTi, Mo金属とナノチューブの最も単純な接合構造(200原子程度)の電子構造を取得した。

<達成度>

  今年度の対象分野の内、大部分について第3四半期である現時点で主な研究成果を得ていることから、当初の目標はほぼ達成していると考える。