平成16年度地球シミュレータ研究プロジェクト利用報告会

利用責任者名 : 宇川 彰 (筑波大学 計算科学研究センター)

プロジェクトテーマ : 地球シミュレータによる格子上の素粒子標準模型の研究

PDF 発表資料 ( 254KB)

発表要旨

1.プロジェクトの目的

  素粒子標準模型とは、強い相互作用を記述する量子色力学(QCD)と、弱電磁相互作用を記述する Weinberg-Salam 理論を統合した場の理論である。標準模型の確立は、素粒子物理学の最大の課題の一つであるが、それには、標準模型を四次元時空格子上に定義して、大規模数値シミュレーションにより解く必要がある。従来、この問題に対しては、膨大な計算規模と、奇数種類のクォークに対する計算アルゴリズムが未開発であることにより、近似無しのシミュレーションは行うことができなかった。本研究課題は、本グループにより最近確立した近似無しアルゴリズムPHMCを基礎として地球シミュレータの計算力を適用することにより、真に自然界に対応した素粒子標準模型のシミュレーションを実現し、素粒子物理学の懸案の解決に大幅な進展を期する。

2.今年度当初の計画

  平成15年度に終了した20x20x20x40格子(格子間隔が約0.1fm)での計算の最終結果を取り纏めると共に、28x28x28x56格子の計算を行う。平成16年度は、トラジェクトリ数2500を生成して精度2-3%でQCDの検証を行う。最終的には計画を平成17年度に延長して、トラジェクトリ数5000の場合に1%精度の達成を目標とする。

  本計画で生成したデータは全て保持してあり、このデータのオフライン二次解析により、様々の物理量の解析が可能である。平成16年度以降、特に、CP非保存に関係して重要な重いクォークの物理量の計算を行い、素粒子標準模型の確立とそれを超えた物理の探求を目指す。

3.今年度得られた成果、および達成度

<成果>

  1. 平成15年度から実施中の計算と通信を重ねた高速化コードが完成した。28x28x28x56格子を14ノードで実行した場合、重ねない場合の実効効率40%を超えて、実効効率46%を得た。
  2. 20x20x20x40格子の解析を完成した。ハドロン質量について動的クォークを増やすと共に、実験値に近づくとの昨年の予備結果を確認した。さらに、16x16x16x32格子の計算(計算規模が小さいため他計算機で実施)と合わせて連続極限を取り、実験値と約2%以内での一致を見た。
  3. 28x28x28x56格子の計算を開始した。クォーク質量パラメータに対して10個の点を取りグルオン配位を生成中であるが、12月5日時点で目標2,500トラジェクトリに対し約2,000トラジェクトリの生成を終えた。現在までに解析の終わっている1,000トラジェクトリでのハドロン質量に関する物理結果の解析によれば、2)の結果を支持するものとなっているが未だトラジェクトリ数が不足であり、引き続き計算を進めている。
  4. 重いクォークの計算のため、u,dクォークを動的に取り扱った場合について方法論の確認を含んだ計算を行い地球シミュレータでの計算の準備を進めた。

<達成度>

  1. 今年度目標である28x28x28x56格子計算については予定どおりに進行中であり、平成16年度末までには解析が終了して連続極限での予備的結果が得られる見込みである。
  2. 重いクォークの物理量については計算法のテストなどが終了し、1月以降にオフライン解析が始められる見込みである。

 以上から当初目標は十分に達成できると考えている。