平成16年度地球シミュレータ研究プロジェクト利用報告会

利用責任者名 : 大村 善治 (京都大学 生存圏研究所)

プロジェクトテーマ : 宇宙環境シミュレータ

PDF 発表資料 ( 3.67MB)

発表要旨

1.プロジェクトの目的

  宇宙開発・利用に不可欠な飛翔体環境の定量理解とその宇宙技術開発へのフィードバックを目指し、実際的な宇宙仮想実験を行う数値チェンバーとして「宇宙環境シミュレータ」を構築する。

2.今年度当初の計画

  前年度にチューニングした電磁粒子コードを用いて大規模イオン推進エンジンからの排出される重イオン放出に対する宇宙プラズマ環境の応答を定量的に解析する。さらにこの電磁粒子コードを用いて様々な形状をもつ宇宙飛翔体を宇宙プラズマ空間中にできるだけ正確にモデル化するために非構造格子の導入を試みる。また、太陽活動度変動に起因する宇宙環境変動が飛翔体に及ぼす影響を定量的に調べるためにMHDコードにより太陽風をパラメータとして地球磁気圏構造のダイナミックな変動を再現する。

3.今年度得られた成果、および達成度

<成果>

  1. イオン推進エンジンからの排出重イオンによる地球磁気圏への影響に関するシミュレーション: 最大512ノード利用した大規模シミュレーションを数例行い、イオンビーム放出時の飛翔体近傍環境応答およびイオンビームダイナミクスに着目したデータ解析を行った。イオンビーム放出時初期において電荷中和のため電子が非常にすばやく応答し、このため飛翔体近傍に大きな電磁界擾乱が発生することが確認できた。現在、このプラズマダイナミクス応答の定量解析を行っている。
  2. 非構造格子シミュレーションコードの基本設計とその動作検証: 格子生成ツールを用いて衛星形状を含めたシミュレーション領域全体の非構造格子化を行うことができるようになった。また、誘電率、導電率などの飛翔体表面素材パラメータを考慮した上で、飛翔体表面での境界条件が矛盾無く満たされる電磁粒子シミュレーション手法についても検討を行い、その基本的な手法の確認と動作評価を行った。
  3. 飛翔体環境の定量理解のための宇宙環境モデリング:2003年10月末に起きた環境観測技術衛星「みどり2号」の故障原因を探るべく、太陽風観測衛星「ACE」で実際に観測された太陽風データを入力値として地球を取り囲む宇宙環境のグローバルシミュレーションを前年度に引き続き行った。その結果、故障に先立つ地球磁気圏前面への衝撃波の到達、磁気圏圧縮、磁気圏尾部からみどり2号軌道付近への高エネルギープラズマ流入に関して、惑星間空間磁場の時間変動と関連付けて宇宙環境を再現することができた。

<達成度>

  達成度は当初目的の70%程度である。大規模シミュレーションの準備、パラメータ選定、結果のデータ転送に予想以上に時間と手間がかかった。なんとか数例の大規模ジョブを実行し、現在、研究チームでデータを共有解析し、表示グラフィックスシステムの開発を行っている。