平成16年度地球シミュレータ研究プロジェクト利用報告会

利用責任者名 : 荒川 忠一 (東京大学 大学院情報学環)

プロジェクトテーマ : 乱流の世界最大規模直接計算とモデリングによる応用計算

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発表要旨

1.プロジェクトの目的

  規範的な乱流構成要素に対してナビエ・ストークス方程式の高精度・高解像度な直接数値シミュレーション(DNS)を行い、その物理現象を明らかにするとともに、乱流の世界最大規模データベースを構築する。一方、LES乱流モデルの信頼性を確認しながら、風車を代表とする環境・エネルギー機械、航空機および都市環境の流れを対象に、遷移・剥離を含む複雑現象の大規模シミュレーションを行い、現象解明とともに、新しいデザインなどを提言する。

2.今年度当初の計画

  基礎乱流DNSは、壁面乱流である平面ポアズイユ乱流、エクマン境界層などの回転系における乱流、そしてスカラー乱流を最大規模の解像度で実施するとともに、一様等方性乱流の超大規模DNS結果を用いてデータ解析を行いながらその物理現象を解明する。

  応用においてはLESを駆使しながら、翼を中心とした大規模シミュレーションを行い、風車の流体力学と騒音の解明、ガスタービンにおける剥離-乱流遷移-再付着などの現象解明を行い、環境問題と密着した新しいエネルギー機械のデザインを目指す。

3.今年度得られた成果、および達成度

物質系における材料開発のための知識ベースの構築に向けて、代表的材料での原子・電子構造計算とデータ蓄積を開始した。また、連携動作による知識ベース利用材料解析の実用化に向け、バルクの物性量算出のための基本動作の確認を行った。

<成果>

  基礎乱流として、平行二平板間乱流の格子点数2048×1024×2048以上の超大規模DNSを実現するにあたり、予備的なDNSの実行とデータベースの作成、及びデータ解析を行った。従来の計算手法とは異なる、結合コンパクト差分スキームを用いたDNSコードの作成も行い、その結果の検証も行った。格子点数1024×512×1024までのDNSデータの解析により、2点速度相関及びそれを特徴付けるいくつかの長さスケール(積分長、マイクロスケール、半値幅等)について解析し、それらの壁からの距離依存性とレイノルズ数依存性について詳細に調べた。その結果、レイノルズ数が大きくなるにつれ、マイクロスケールと半値幅が壁からの距離のべき則に従う領域が慣性低層に現れてくることなどを発見した。また、非圧縮減衰乱流のDNSにより、エネルギーの時間減衰のべき指数-1.41を得た。この値はコロモゴロフの理論における-10/7(≒-1.43)に対し非常に近い値であり、乱流中の大きなスケールの構造がある時間的不変性をもつことを主張するロイチャンスキーの普遍則を支持するものである。さらに、回転系の基礎乱流現象も明らかにしつつある。

  風車のLESを用いた3億格子点に及ぶ大規模計算を実施し、翼先端形状の違いによる流体力学性能および騒音の増減の詳細な比較を行い、Ogee型と呼ばれるタイプの採用を提唱した。また、航空機の主翼先端に利用されているウィングレットを風車に応用を試みつつあり、効率上昇とさらなる騒音低減を目指した計算を実行している。さらに、ガスタービンにおける剥離-乱流遷移-再付着などの予測に成功し、その応用が期待される。

<達成度>

  LES手法を用いた風車などの応用分野においては、初期の目標をほぼ達成しつつある。

  一方、基礎乱流では、ES上で平行二平板間乱流の超大規模DNSを実現するにあたり、予備的なDNSの実行と検証も終え、準備もほぼ整えることができたものの、壁乱流の超大規模DNSは実現できていない。それは、壁乱流で意味のある統計量を取るためには十分な積分時間を取る必要があり、超大規模DNSで必要なノード時間が乱流コンソーシアムで使用可能なノード時間を大幅に上回ってしまうからである。