平成16年度地球シミュレータ研究プロジェクト利用報告会

利用責任者名 :斎藤稔(弘前大学理工学部)

プロジェクトサブテーマ2 : 「蛋白質の高次構造変化のリアルなシミュレーション」

発表要旨

1.プロジェクトの目的

   ヘモグロビンの高次構造変化をコンピュータシミュレーションによって追いかけて、その過程を原子レベルで可視化するのが目的である。ベクトル型スーパーコンピュータ向けに開発した分子動力学シミュレーションのプログラムCOSMOS90を、更に地球シミュレータ上で高速化して用いる。

2.今年度当初の計画

  地球シミュレータ上で高速化したCOSMOS90を使って、ヘモグロビンの本格的なシミュレーションを実施する。まず、(1)小規模の蛋白質で高速化を行ったCOSMOS90が、実際の規模(水中のヘモグロビン)で、十分なスピードが出ることを確認する。(2)水中のヘモグロビンのリアルなシミュレーションを行うために、初期構造や力場パラメタなどの初期データを準備する。次に(3)テスト計算のための短いシミュレーションを行ったのちに、長時間のシミュレーションを行う。

3.今年度得られた成果、および達成度

<成果>

今年度の計画(上記の(1)、(2)、(3))の進捗状況は、それぞれ以下のようである。

  1. COSMOS90は、実際の大規模系(水中のヘモグロビン:約12万原子)についても、十分なスピードを発揮した(0.023秒/ステップ)。ベクトル化による加速は、高速化に用いた小規模計算よりも、更に向上した。
  2. 水中のヘモグロビンについて、初期構造や力場パラメタなどの初期データのセットアップが終わった。
  3. 地球シミュレータ上で、長時間のシミュレーションと同じ条件で、短いシミュレーションを行ってテスト計算を行っている。

今後の展開:

まず、中規模のシミュレーション(107ステップ)によって、ヘモグロビンの酸素脱着にともなって起こる、酸素吸着部位近傍の早い時間の構造変化が観測される。次に、長時間のシミュレーション(109ステップ)によって、高次構造全体のゆっくりした変化が観測される。いずれも、静的な構造の違いが、実験事実によって明らかになっているものの、構造変化の途中の過程は実験によっては観測できない。また、局所的な構造変化が高次構造全体の変化をどのようなメカニズムで引き起こすのかについては、実験的に実証されていない。これらの点がシミュレーションによって、解明されると期待される。

<達成度>

16年度前半の目的は達成した。16年度後半の目的は、まだ実施の途中である。したがって、16年度の目的の達成度は、現在のところ約60%である。プロジェクトの研究計画全体では約70%である。