平成16年度地球シミュレータ研究プロジェクト利用報告会

利用責任者名 :岡本祐幸(分子科学研究所)

プロジェクトサブテーマ3 : 「第一原理からのタンパク質の折り畳みシミュレーション」

発表要旨

1.プロジェクトの目的

  強力なシミュレーション手法である拡張アンサンブル法を用いて、アミノ酸数50個余りのタンパク質の水中の折りたたみシミュレーションに世界で初めて成功することを目指す。特に、拡張アンサンブル法としては、我々が独自に開発し、世界中で現在使われているレプリカ交換分子動力学法(REMD)及びその更なる改良版であるマルチカノニカルレプリカ交換法(MUCAREM)を用いる。タンパク質の折り畳み問題は1960年代初頭のアンフィンゼンの実験以来の難問であるが、現在、我々が提唱した拡張アンサンブル法がこの問題を解くかもしれないという期待が国際的に高まっている。

2.今年度当初の計画

  プロテインGというアミノ酸数56個のタンパク質に17,187個の水分子を配した系(全体の原子数は52,416個)において、折り畳みの拡張アンサンブルシミュレーションを実行する。

3.今年度得られた成果、および達成度

<成果>

  地球シミュレータ用プログラムのチューニングが終了し、いよいよプロダクションランを始めた。そして、上の系のレプリカ交換分子動力学法に基づく拡張アンサンブルシミュレーションに成功した。すなわち、従来のカノニカルアンサンブルシミュレーションでは期待できないほど広い構造空間のサンプリングが実現された。自然の構造への折り畳みには未だ成功していないが、αヘリックスやβシートなどの2次構造が頻繁に形成されることを示すことができた。

<達成度>

  上のような大規模で複雑な系における拡張アンサンブルシミュレーションに初めて成功したと言える。特に、完全に伸びた初期構造からシミュレーションを始めて、自然の構造からの主鎖の根2乗平均距離で約6オングストロームのところまで近づくことができた。まだ、計算時間が十分でないので、自然の構造への折り畳みは達成されていないが、その達成のための準備が整いつつあると言える。