■発表要旨
1.プロジェクトの目的
独自に開発中の大規模生体超分子複合体系の分子動力学プログラムコードPABIOSを用いて、既存プログラムでは実行不可能であった数百万原子からなる生体超分子系の分子動力学シミュレーションを地球シミュレータ上で実行し、相同組換えによるDNA修復機能のメカニズム解明を目指す。
2.今年度当初の計画
PABIOSを地球シミュレータ上で並列化チューニング及びベクトル化チューニングし、並列ベクトル計算機上で計算能率を高める。そして相同組換えに重要なRuvA-Holliday分岐DNAのシミュレーションを実行し、相同組換えの解析をする。更にRuvAB-Holliday分岐DNAの大規模シミュレーションの準備を進める。
3.今年度得られた成果、および達成度
PABIOSは高い並列化効率を実現する3次元空間分割法を用いている。そして、分子動力学シミュレーションにおいて最も計算負荷の高い長距離相互作用については高精度に計算するParticle-Particle Particle-Mesh (PP-PM)法を採用している。系が生体超分子のように異方的な場合、各CPUの計算負荷が不均等になり並列化効率が悪くなる。そこで今年度はCPUのロードバランスを最適に保つために、各CPUが担当するセル数を計算中に変更できる動的ロードバランスを開発した。また、並列化効率の高いPP計算を担当するCPUとやや並列化効率が落ちるPM計算を担当するCPUを切り分けた。これによりPM計算に割り当てるべき最適なCPU数を選択することが可能になった。更には、PP計算で大きな計算時間を占める1-5相互作用計算ルーチンをベクトル化チューニングした。
以上の技術を用いることで、平成16年12月現在、地球シミュレータ上で10ノードを用いたベンチマークテスト(RuvA-Holliday分岐DNA複合体の系,約14万原子)においてPABIOSは並列化効率50%以上、ベクトル化率95%以上を達成し、昨年度のPABIOSと比べても計算速度を2倍近く、向上させることに成功した。現在、10ノード以上の利用を申請中である。