■発表要旨
1.プロジェクトの目的
本研究は日本原子力研究所と高エネルギー加速器研究機構が共同で開発中のJ-PARCにおける核破砕タイプの高密度中性子源である水銀ターゲットの開発に関するもので、最終目的は、水銀ターゲットの強度設計支援や、液体水銀内部で起こる現象を把握しターゲットの使用可能期間を延ばすことにある。シミュレーションに必要なデータは、設計を担当しているグループから提供を受け、有効な計算結果が得られた場合、その結果は設計担当グループに還元され利用される。中性子散乱実験は、たんぱく質の精密な構造決定など、科学の様々な分野で利用されるもので、より高密度の中性子源の開発が待たれている。水銀ターゲットの開発はその要望に答えるもので、特に、ターゲットの使用可能期間延長という目的のためには、地球シミュレータでなければ不可能な大規模な計算が必要となる。
2.今年度当初の計画
昨年度までに開発したTVDスキーム組込み流体解析コードと構造解析コードとの弱連成コードに、新たにキャビテーションの挙動に関するマクロモデルを組み込み、液体水銀の圧力波伝播とターゲット容器壁の変形挙動と気泡成長の相互作用をシミュレーションすることで、容器壁面上の圧力変動を評価し、エロージョンとの関係を解析する。
なお、水銀ターゲットの形状データはCADデータに基づきいっそう詳細なモデルに代替する。また、キャビテーションの導入に伴い、タイムステップを短縮する。取り扱うデータ量の増大に対応して、コードの高速化・可視化の変更を加える。
3.今年度得られた成果、および達成度
<成果>
連成コードに新たにキャビテーションの挙動に関するマクロモデルを組み込み、高速化したコードが正常に動作することを確認した。キャビテーションの導入によって、圧力波の伝播に遅延が生じ、またピーク高さが変化することを確認した。1000万メッシュ規模の問題を地球シミュレータで40+1分割(流体40、構造1分割、キャビテーション壁面1層)で計算し、ベクトル演算率が97.4%、並列化率が98.9%というパフォーマンスを得た。
<達成度>
1000万メッシュ規模以上の大規模問題については実施途上であるが、中規模以下の問題については概ね良好な結果を得ており、年度末までには達成できるものと見込んでいる。