■発表要旨
1.プロジェクトの目的
ワイドギャップ半導体であるSiCを用いた半導体デバイスは、耐放射線にすぐれ、高電圧、高温での動作が可能なことから、従来のSiやGaAs半導体デバイスでは動作が困難な、原子炉や宇宙環境等、極限環境下で用いられる素子として期待されている。しかしSiCデバイスのSiC/SiO2界面にはSiデバイスのSi/SiO2界面に比べて界面欠陥が約100倍多く存在しており、チャネル内の電子移動度は理論的に予測される値よりも遥かに低い値しか実現できていない。物理的測定手法から推定される界面欠陥の原子構造から電気特性を推定することは困難であるため、第一原理分子動力学法を用いて界面欠陥構造を生成し、エネルギー準位や荷電状態等を算出することで、界面欠陥の物理構造とその電気特性との関連性を明らかにし、SiC結晶表面の酸化膜成長メカニズムを明確にする。これによりMOSFETの電気特性を最大限に引き出せる物理的界面形成法の開発指針を得る。
2.今年度当初の計画
- VASPの地球シミュレーターでの並列化チューニング
- MDシミュレーションによる急冷でSiO2アモルファス化を行いアモルファスSiO2/SiC界面を生成
- アモルファスSiO2/4H-SiC(0001)界面への欠陥導入シミュレーションと電子構造解析
- アモルファスSiO2/4H-SiC(0001)界面における界面中間層を含んだ構造のモデル化とシミュレーション
- アモルファスSiO2/6H-SiC(0001)界面シミュレーション
3.今年度得られた成果、および達成度
<成果>
- VASPの並列化チューニングに関しては、ほぼ当初の計画通りに並列化率98.8004%、並列化効率52.34%と達成し、10ノードではあるが12時間の利用許可が得られた。
- MDシミュレーションによる急冷SiO2アモルファス化については、100原子程度の小規模モデルでパラメータ探査を繰り返し、4000K、3psでの加熱、-1000K/psでの急冷計算で十分なアモルファス層を生成出来る事を見出した。
- アモルファスSiO2/4H-SiC(0001)界面構造モデルでの欠陥導入、及び、界面中間層モデルについては、現在400原子モデルで継続計算中。
<達成度>
- 計算コードのチューニングに関しては当初予定より多少遅れたが完了した。
- 各種シミュレーション計算に関しては、100原子モデルによるパラメータ導出が終了しており、今年度中に400原子モデルでの本計算が数ケース完了する予定である。1000原子モデルに付いては、割り当てCPU時間の中では今年度中に完了することは難しい。