■発表要旨
1.プロジェクトの目的
最近の超伝導ナノファブリケーション技術の発展により、全く新しいタイプの超伝導デバイス開発の可能性が開けてきた。これに関連し、放射線検出超伝導デバイス開発に関連したシミュレーション研究を行う他、ナノスケール超伝導体の基礎物性研究を実施する。
2.今年度当初の計画
当プロジェクトでは、具体的に大きく分けて以下の二つの目標がある。
- 1) 超伝導放射線デバイス開発に関連したシミュレーション研究では、中性子飛来の時系列検出、X線やγ線などの放射線検出のためのデバイスシミュレーションを行う他、超伝導体をモザイク状に配置して得られる量子ドットデバイスの研究も行う。
- 2) ナノスケール超伝導の基礎物性研究では、巨視的レベル及びミクロレベルでのシミュレーションを行い、ナノ超伝導発現機構の解明を始めとして新奇物性を明らかにする。
3.今年度得られた成果、および達成度
<成果>
今年度の成果を上記二つの目標について各々、記す。
- 1) 超伝導体を利用した放射線検出デバイスの数値シミュレーションでは、X線検出器において用いられている電圧バイアス(電圧一定の条件を超伝導転移端で実現する)の条件を直接シミュレーションすることに成功した。これを用いて、超伝導体MgB2の中性子衝突後の超伝導非平衡ダイナミクスをシミュレーションし、時間分解能等を評価した。
- 2) ナノスケール超伝導の基礎物性研究では、ナノ強相関電子系の量子状態を厳密対角化法を用いて調べ、ナノスケールにおいて超伝導の基本要因である電子ペアの形成が如何にして起こるかを明らかにした(M.Machida et al., Phys. Rev. Lett.95, 218902(2005))他、厳密対角化法に初めて前処理付き共役勾配法を適用し、地球シミュレータ512ノードを使用した場合に16TFlops(50%以上のピーク比)を超える計算性能を達成し、千数百億次元(世界最大次元)の行列を数分で対角化することに成功した。この成果は、国際会議SC2005にてGordon-Bell Prizeのファイナリストとしてノミネートされた。
<達成度>
今年度の達成度を上記二つの目標について各々、記す。
- 1) 超伝導を利用した放射線検出デバイスの数値シミュレーション:80%程度の達成度。
- 2) ナノスケール超伝導の基礎物性研究:100%の達成度。