■発表要旨
1.プロジェクトの目的
燃料電池は、我々の生活レベルを落とすことなく、CO2削減を達成して地球環境を救う最も重要な技術であり、特に固体高分子膜型燃料電池は自動車や家庭用、さらに携帯機器等の電源として期待されている。しかし、その本格的な実現のためには大きな技術的な壁がある。その解決のために、単に試行錯誤で電極を開発するのでなく、燃料電池を構成するパーツの中で最も基本的な部分である電極について、電極反応を第一原理的に分子・原子レベルから解明することが求められている。電極を構成する金属原子、それに接する溶液の溶媒分子、電極反応する吸着分子・原子、電気を運ぶイオンと電子などを含む大規模かつ複雑な系での時間軸上の第一原理分子動力学計算によりナノ領域のシミュレーションを行う。この際に、電極電位を制御する方法などを新たに導入して、より高精度な結果が得られるようにする。
2.今年度当初の計画
- 本計算で使う第一原理分子動力学コードSTATEは、ベクトル並列について多くのコンピュータ上で高い実績があるが、さらに並列化効率をあげて大規模計算を可能にする。
- 燃料電池の実際の電極材料の基本である白金電極上での反応過程をシミュレーションするために、電極を白金100-200原子程度のスラブで近似して、さらに水100-200分子程度が存在するというこれまでにない大規模な系で、水素の電極上での電子移動に伴う反応過程を数psecという第一原理計算としては大規模・長時間のシミュレーションを行う。
3.今年度得られた成果、および達成度
<成果>
- 使用するコードSTATEは平面波基底の密度汎関数法による電子状態計算がメインであり、ベクトル化率は以前から99%を越えているが、並列化についてはいわゆるk-点並列とバンド並列について2重のMPI並列化を行った。さらにOpenMP並列とベクトル並列もおこなった。一般的な問題と異なる点は、FFTや対角化は大規模なものでなく、小規模なものが多数回あらわれることであり、特に金属と分子が共存する第一原理計算では、この点で半導体や分子性液体より計算負荷が高い。FFTEベクトル版の導入、ScaLAPACKによる並列版の対角化などの導入により、32ノードで57%の並列化効率を達成した。さらなる大規模化には、完全な2重、3重の並列化が必要である。
- 電極反応については、白金微粒子および、白金電極上での水素分子発生反応について計算を行っているが、電位規制する新たなスキーム「有効遮蔽体法」を用いて、種々の電極電位での反応シミュレーションを行う。
<達成度>
チューニング:100%、計算:80%