平成17年度地球シミュレータ研究プロジェクト利用報告会

プロジェクト名 : 乱流の世界最大規模直接計算とモデリングによる応用計算

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発表要旨

1.プロジェクトの目的

  壁境界層やエクマン境界層に代表される規範的な乱流構成要素に対して、ナビエ・ストークス方程式の高精度・高解像度な直接数値シミュレーションDNSを行い、その物理現象を明らかにするとともに、乱流の世界最大規模データベースを構築する。一方、LES乱流モデルの信頼性を確認しながら、風車を代表とする環境・エネルギー機械、および都市環境の流れを対象に、遷移・剥離を含む複雑現象の大規模シミュレーションを行い、現象解明とともに、新しいデザインなどを提言する。特に、風車の設計、事故調査、発電量の予測とった工学的応用を目指す。本プロジェクトは、日本流体力学会の乱流コンソーシアムを母体として活動を展開中であり、学会の協力を得て、蝶を代表とする昆虫の飛翔の科学の解明といった新しい話題にも研究を広げる。

2.今年度当初の計画

1. 一様等方性乱流DNSデータの解析を行う。また、乱流におけるラグランジュ的な基礎データの構築を行う。

2.海洋や大気に見られるような塩分勾配や温度勾配がある場合の高Reynolds数、高Peclet数乱流中のスカラー量の輸送過程について、その高解像度直接数値計算を実行する。

3. 回転を伴う乱流境界層(エクマン境界層)を対象として、直接計算とデータベースの構築を行う。

4. 気体と液体の界面における乱流構造に関するハイブリッドシミュレーションを実施する。

5. プロペラ風車の翼端形状の変化による空力性能向上および騒音低下を目指した設計を提案する。

6. 台風や複雑地形などによる日本の風の特異な条件における風車トラブルの解明を試みる。

7. 気象モデルと地域風況シミュレーションとの結合により、発電量予測システムの構築を試みる。

8. 上記環境シミュレーションと密接に関連する都市地形および回転翼に関連するLES研究を行う。

9. 蝶を代表とする生物飛行のバイオインフォマティクス・データベースを構築する。

3.今年度得られた成果、および達成度

<成果>

1. 乱流中の慣性小領域におけるエネルギー輸送の統計を詳細に調べ、エネルギー散逸率の局所平均の統計との類似性を発見した。

2. 高Reynolds数、高Peclet数乱流中のスカラー量の高解像度直接数値計算を実行し、スカラー場の慣性領域でのスペクトルと普遍定数を見出した。

3. 世界最大のレイノルズ数および計算領域を有するエクマン境界層の直接数値計算を実施した.基礎的な乱流統計量のデータベースを作成し,より高精度の乱流モデルを構築した.また,乱流構造の基礎的特性・力学機構に関する新たな知見を得た.

4. 分散性気液混相乱流場の直接数値計算を実施した.

5. ウイングレットによるプロペラ風車の空力性能向上を確認し、設計指針を与えた。

6. 日本の風の特異な条件における風車トラブルの解明を試みる準備をしたが、該当風車トラブルの原因が最終的に雷によるものと判明した。

7. NEDOプロジェクトに応募し、気象モデルと地域風況シミュレーションとの結合による発電量予測システム作りを立ち上げた。

8. 上記環境シミュレーションと密接に関連する都市地形、および環境適合型の小型ジェットエンジンを想定したタービン回転翼に関する詳細なLES解析を行った。

9. 蝶を代表とする生物飛行のバイオインフォマティクス・データベース構築の研究を準備した。

<達成度>

1. 60%: データ解析は進んだが、Lagrange的な統計量はまだ得られていない

2. 60%: さらに大規模な計算はまだ出来ていない

3. 90%: 目標通り世界最大のレイノルズ数および計算領域を有する直接数値計算を実施したが,乱流統計量が完全に収束していない

4. 60%: さらに大規模な計算はまだ出来ていない

5. 80% 空力性能向上を確認したが、今後計算例を増やす必要がある。

6. ―― 風車トラブルの原因が当初予想と異なったため、解析を中止した。

7. 60% NEDOプロジェクトに関連し、研究グループを拡大しつつある。3年計画とし、現在、観測システムなどを準備している。

8. 90% 都市地形においては粗度のさらなるパラメータサーベイ、タービン回転翼については異なる運転条件における解析に発展させたい。

9. 60% 蝶の飛行のバイオインフォマティクス・データベースを拡大しつつある。