平成17年度地球シミュレータ研究プロジェクト利用報告会

プロジェクト名 :宇宙の構造形成とダイナミックス

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発表要旨

1.プロジェクトの目的

  銀河や銀河団のような宇宙の基本構造がどのようにして形成され、進化してきたか、ブラックホール候補天体に代表される高速ジェットの噴出を伴う激しい活動現象、地球環境にも影響を及ぼす太陽活動の起源等を、複数階層を計算領域に含め、重力、磁気、輻射等による階層間相互作用を取り入れたマルチスケール、マルチフィジックスシミュレーションによって明らかにすることを目的とする。

2.今年度当初の計画

1. 解適合格子法(AMR)を用いた重力多体シミュレーションコードを地球シミュレータに実装し、銀河や銀河団の骨格を作る暗黒物質(ダークマター)の時間発展を調べる。

2.ブラックホールに落下する物質が作る降着円盤からジェットが噴出する過程を降着円盤とジェットの両者を計算領域に含めた磁気流体数値実験によって調べ、細く絞られたジェットが安定に存在する理由を明らかにする。また、相対論的ジェット中での非熱的粒子加速過程をシミュレートするマルチフィジックスコードの開発を進める。

3. 太陽内部の対流層からコロナに至る各階層を結合し、ダイナモ領域で作られた磁場が浮上し、磁気エネルギー解放・コロナ質量放出に至る過程をシミュレートする。


3.今年度得られた成果、および達成度

<成果>

(a) 解適合格子法を用いた重力多体シミュレーションコードを地球シミュレータに実装し、25ノードで50%の並列効率を得た。

(b) 降着円盤とジェットの両者を計算領域に含めた本格的な3次元磁気流体シミュレーションを開始した。予備的な計算の結果、円盤の回転によって磁場が強く捻られる場合でもジェットは安定に存在できそうなこと、円盤内部で磁気エネルギーの蓄積と解放が準周期的に発生して円盤振動を励起する場合があることが示唆された。

(c) 地球シミュレータを用いて実施した銀河形成シミュレーションの結果をまとめた論文がNature誌に受理された。太陽対流層からコロナへの磁束浮上過程についてもNature誌に掲載した論文の続報を日本天文学会誌に投稿した。

(d) 相対論的磁気流体コード及び粒子加速過程を扱うための粒子コードの開発が進展した。

<達成度>

(1) 解適合格子を用いた重力多体コードについてはさらに効率を改善する必要があるため50%

(2) 降着円盤とジェットのシミュレーションについては、予備的計算が完了した段階であり、50%。

(3) 太陽浮上磁場シミュレーションは順調に成果が出ており、70%。