■発表要旨
1.プロジェクトの目的
前年度までの本プロジェクトを継続し、気相、液相、固相が混在している場で, とくに内部構造を作りながら複雑な振る舞いを示す系に対して、粒子に基づく離散モデル(DEM-Discrete Element Method)と粒子-連続体カップリングモデルを構築し、大規模シミュレーションのための計算手法と技術を確立する。そして、幾つかの重要な応用問題に適用し、複雑多相系現象の解明と解析、予測に役立てる。
- 血流シミュレーション:流体と柔らかい固体の相互作用問題として、赤血球の変形性が毛細血管における流れ抵抗と分岐流に与える影響の解明
- 電子写真シミュレーション:電磁場における粉体挙動問題として、電子写真システムの二成分(トナーとキャリアー)挙動の解明
- 高炉内粒子運動シミュレーション:気流のある場における微粒子運動の解析
- 海底侵食シミュレーション:海水の流れ場における海底砂粒子の運動解析
- 地盤・岩盤・プレート運動シミュレーション:固体-粒状体-流体からなる地球内部及び表面物質の運動・破壊・流動解析
以上5つのサブテーマについての研究を進める
2.今年度当初の計画
- 血流:昨年度までに、規定した流れ場における赤血球運動を再現する計算力学シミュレーションを地球シミュレータ上で展開するためのベクトル化・並列化の最適化を行い、128ノードを用いたプロダクションランに成功した。本年度は分岐血管などの複雑モデルを扱い、最終的な目標である3次元モデルへの拡張を行う。
- 電子写真:電子写真システムの二成分現像方式における現像ローラ近傍の現像剤挙動を、従来のDEMに電磁気力を追加した3次元粒子挙動シミュレーションを実施する。
- 高炉:前年度までのデータから粒子沈降速度予測モデルを構築する。
- 海底侵食:現象に関するデータ収集と基礎モデルを構築する。
- 地盤・岩盤・プレート:4体粒子モデルQDEMで弾性固体と粘性流体のカップリングモデルを作りベクトル・パラレルチューニングを行う。
3.今年度得られた成果、および達成度
<成果>
- 血流:3次元モデルを構築し、ES上でのベクトル化・並列化を行った。また128ノードで3次元モデルのプロダクションランにも成功した。その結果、昨年度の2次元モデルでも見られた赤血球が血管中心に偏るAxial Migration現象の他、膜回転のタンクトレッティングやタンブリング現象が見られた。2次元モデルでは、大規模な分岐欠陥などシミュレーションを行った。
- 電子写真:電子写真システムのトナーとキャリアーの3次元粒子挙動シミュレーションの並列計算技術を構築した。担当メンバーの所属会社の都合上、今年度のES上でのプロダクションランは行えなかった。
- 高炉:前年度までの計算結果から、新しい粒子沈降速度の予測モデルを構築した(現在論文投稿中)。
- 海底侵食:海底侵食現象に関する調査研究を行った。また来年度にハイパードルフィンによる海底地盤安定現位置試験によるデータ収集に関する準備を行った。乱泥流による海底侵食モデルの基礎研究を行った。
- 地盤・岩盤・プレート:4体粒子モデルQDEMで弾性固体と粘性流体のカップリングモデルを作り、他の手法の計算結果との比較を行い、手法の検証を行った。またベクトル化も行った。
<達成度>
- 血流:100%
- 電子写真:20%
- 高炉:90%
- 海底侵食:70%
- 地盤・岩盤・プレート:70%