■発表要旨
1.プロジェクトの目的
宇宙開発・利用に不可欠な飛翔体環境の定量理解とその宇宙技術開発へのフィードバックを目指し、実際的な宇宙仮想実験を行う数値チェンバーとして「宇宙環境シミュレータ」を構築する。
2.今年度当初の計画
地球シミュレータ用に開発した3次元領域分割型電磁粒子コード(NuSPACE)の高効率並列・ベクトル化チューニングを行い、宇宙環境シミュレータの原型であるスケルトンコードを完成させる。イオン推進エンジンからの重イオンビーム放出に関する計算機実験を実行し、衛星環境変動、特に、ビーム放出口近傍におけるイオンビームと中和用電子によるプラズマ不安定性による衛星環境への影響を評価する。並行して、アルフヴェン波による太陽風プラズマ加速に着目し、高空間分解能HALL-MHDシミュレーションコードの開発、アルフヴェン波の偏波に対する伝搬特性、太陽風加熱・加速への影響に関する基礎解析を開始する。
3.今年度得られた成果、および達成度
<成果>
- 3次元領域分割型電磁粒子コード(NuSPACE)の完成
マルチノード型計算機システムで高効率なプラズマ粒子シミュレーションを行うために、3次元領域分活型電磁粒子シミュレーションコードNuSPACEを新たに開発した。コードチューニングを精力的に行い、並列・ベクトル化効率ともにほぼ100%を達成することができた。これにより、宇宙環境シミュレータの原型となるスケルトンコードを完成させた。 - イオン推進エンジンからの重イオンビーム放出に関するシミュレーション
イオンエンジンスタート時のビーム放出口近傍領域に着目した3次元ローカルビームシミュレーションを行った。イオンビーム先端部は電子による中和が行われるが、ビーム放出口近傍では、イオンビーム速度と中和電子の熱温度の比により中和電子ダイナミクスおよび電界に擾乱が生じることを確認した。これは、電流駆動型ビーム不安定性が原因であると考える。 - アルフヴェン波による太陽風加速に関する基礎研究
太陽風中のアルフヴェン波の偏波に対する伝搬特性や太陽風加熱・加速に対する影響を明らかにするために、格子間隔をイオン慣性長にとる高空間分解能HALL-MHDシミュレーションコードの作成を開始した。球座標1次元で数億点の格子点からなるシミュレーションシステムを用いて現在、動作試験中である。
<達成度>
達成度は当初目的の60%程度である。宇宙環境シミュレータの原型となる3次元領域分活型電磁粒子シミュレーションコードNuSPACEを新たに開発し、精力的なコードチューニングにより、並列化、ベクトル化ともにほぼ100%の効率を達成することができた。これは粒子シミュレーション手法の革新といえる。ただし、地球シミュレータのMPI関連ライブラリーとコードの整合性に起因する動作不具合が発覚し、現在その原因究明を行っている。