平成17年度地球シミュレータ研究プロジェクト利用報告会

プロジェクト名 : テラヘルツ発振超伝導素子に関する大規模シミュレーション

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発表要旨

1.プロジェクトの目的

光とミリ波電磁波の間にあるテラヘルツ(THz)波は、未開拓領域であり、医療診断、環境センシング、大容量高速通信等の多数の新規分野に応用が期待されている。これら応用に対しパルス波のテラヘルツ波では不十分であり、高出力の連続波テラヘルツ波光源の開発が必要である。しかし既存のレイザー法等による連続波光源では能力不足である。高温超伝導体はそれ自体がジョセフソン結合系を形成しており、テラヘルツ帯に振動数を持つジョセフソン・プラズマというシャープな励起状態を有する。定電流をかけることにより、ACジョセフソン周波数と共鳴した強い発振が起き、連続テラヘルツ波を高出力に放射することが期待されている。本素子の開発には、強非線形方程式を多数の空間・時間メッシュにより解く大規模シミュレーションが必要であり、地球シミュレータの使用が必須である。以上より、本研究は、大規模シミュレーションによるテラヘルツ発振超伝導素子開発に関する研究を目的とする。本研究成果は、テラヘルツ発振のみならず、光通信の情報量の増大、ひいては超高速、低電力計算機の開発、ナノテクノロジーへも貢献することが期待できる。

2.今年度当初の計画

  1. 発振メカニズムの詳細解明:前年までに、従来の仮説と異なる「不規則分布fluxonsから規則的電磁場が発生する」という現象を発見した。このメカニズムをシミュレーションにより物理的に解明する。本素子の特徴である「周波数が可変」となる理由を解明し、より広い範囲で連続周波数可変を実現する方法を得ることを目指す。
  2. 発振条件の詳細解明:実験に具体的指針を与えるデータの整備するため、パラメータ(外部磁場Boy'、Inductive 係数ζ、層数Nc等の影響)が発振に寄与する影響度を把握する。
  3. 設計・開発用3Dコードによる解析:3次元解析コードのチューニング、よりリアルな形状での解析、3次元形状・システム全体の影響の検討を行う。

3.今年度得られた成果、および達成度

<成果>

  1. 発振メカニズムの詳細解明:
    シミュレーションにより量子力学変数ψに関係する層毎の量は不規則的、c軸方向平均場は(準)規則的であることが分かり、不規則的分布を作る力と規則的分布を作る力のバランスによる準安定状態が、不規則分布fluxons から規則的電磁場を生成するという予想を得た。また、1サイクル中に波数が変化し、平均波長が見かけ上連続的に変化し、電流制御による連続周波数変化を可能としていることが分かった。
  2. 発振条件の詳細解明:
    シミュレーションにより、パラメータ(外部磁場Boy'、Inductive 係数ζ、層数Nc)が発振に寄与する影響を把握した。例えば、外部磁場を上げると発振電圧は上昇、Inductive 係数ζを小さくしていくと1.0×105以下で発振電圧は急上昇する等。
  3. 新たな連続波テラヘルツ波発生方法の考案(ab面より放射)(計画外):
    前年までにbc面より放射する連続波テラヘルツ波発生方法を研究してきたが、bc面の面積が小さいため放射強度に限界があった。今年度は、面積の大きいab面からの放射する方法を研究(ANLとの共同研究)し、その放射メカニズム、放射されるテラヘルツ波の特性を把握した。
  4. 実験への貢献:実験指針へのデータ、情報を提供した。

<達成度>

今年度当初に挙げた上記計画に対し、3四半期である現時点で以上に示した成果を得ることができた。3次元コードでの解析は計算資源量の制限等から出来なかったが、新たな連続波テラヘルツ波発生方法を考案した。現時点での成果として当初の目標はほぼ達成できていると考える(95%)。