平成17年度地球シミュレータ研究プロジェクト利用報告会

プロジェクト名 :地球シミュレータによる格子上の素粒子標準模型の研究

PDF 発表資料 ( 2.24MB)

発表要旨

1.プロジェクトの目的

素粒子標準模型とは、強い相互作用を記述する量子色力学(QCD)と、弱電磁相互作用を記述する Weinberg-Salam 理論を統合した場の理論である。標準模型の確立は、素粒子物理学の最大の課題の一つであるが、それには、標準模型を四次元時空格子上に定義して、大規模数値シミュレーションにより解く必要がある。従来、この問題に対しては、膨大な計算規模と、奇数種類のクォークに対する計算アルゴリズムが未開発であることにより、近似無しのシミュレーションは行うことができなかった。本研究課題は、本グループにより最近確立した近似無しアルゴリズムPHMCを基礎として地球シミュレータの計算力を適用することにより、真に自然界に対応した素粒子標準模型のシミュレーションを実現し、素粒子物理学の懸案の解決に大幅な進展を期する。

2.今年度当初の計画

  1. 平成16年度に開始した28x28x28x56格子は本計画の最大問題サイズである。これまでの研究から、最終的な物理結果を得るには、少なくとも5000トラジェクトリの統計数が必要と見込まれる。平成16年度に引き続き,平成17年度には合計5000トラジェクトリ以上の生成を目標とする。これにより28x28x28x56格子でのグルオン配位の生成を終え、これらを用いて以下の物理量の計算及び解析を行う。
  2. ハドロン質量及びクォーク質量の連続極限での最終的な解析。特に軽いクォークについて、従来値より大幅に軽い値を示唆する予備的結果の確認を行う。
  3. 重いクォークの物理量(D、B中間子崩壊定数等)の計算を行いCKM行列への制限を得る。
  4. 以上の結果に総合的解析を加え、連続極限での物理量の最終結果を求めて4年間の最終的な成果発表を行う。
  5. また、生成データをILDG(International Lattice Data Grid)で世界公開する。

3.今年度得られた成果、および達成度

<成果>

  1. 28x28x28x56格子について予定を超える6000トラジェクトリの生成とハドロン伝播関数の計算を11月末に終えた.
  2. 28x28x28x56格子上でのメソン質量及びクォーク質量の解析を行い,20x20x20x40格子及び16x16x16x32格子の結果と併せて連続極限への外挿を検討した.結果は極めて安定した外挿を与え,連続極限で統計誤差2%で実験値との一致を確認した.またクォーク質量について,mud(MS, 2GeV)=3.47+-0.15MeV, ms(MS, 2GeV)=89.6+-4.2MeVとの最終値を得た.
  3. 重いクォークの物理量を計算するための相対論的定式化のクェンチ近似テスト計算を行い連続極限への外挿が安定に行えることとプログラムの確認を行った.地球シミュレータで生成したグルオン配位上での計算を現在準備中であり,年度末までに1/3を終了の予定である.
  4. データは既に公開用サーバに蓄積済みであり,今後データのマークアップ,国際標準ファーマットへの変換等を行い平成18年6月のILDGオープニングに間に合わせる予定である.

<達成度>

  1. 100%
  2. 100%
  3. 30%.現在準備中であるが年度末までには全データの1/3の解析を修了の見込み
  4. 100%.現在準備中であるが平成18年6月には全データの公開を達成の見込み