平成17年度地球シミュレータ研究プロジェクト利用報告会

プロジェクト名 :カーボンナノチューブの特性に関する大規模シミュレーション

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発表要旨

1.プロジェクトの目的

カーボンナノチューブ(以下、CNT)はナノテクテクノロジの基幹材であり、その特性把握は激しい国際競争となっている。本研究は、技術的に難しいナノスケール実験に代わり、地球シミュレータを利用する大規模シミュレーションにより、産業界などが必要とするCNTの機械的、熱的、電子的な諸特性を明らかにする。さらに高品質CNTの生成、改質・加工などの応用プロセスシミュレーションを通じて新物質・新機能創製に関する基本情報を提供し、しかもそれらを戦略的知的財産として我が国のナノテクノロジの国際競争力の維持確保を支援することも目的としている。

2.今年度当初の計画

CNT基本特性として、CNT複合材の創製等に必須となる、1)機械強度、電子状態等を把握する。また、CNTの次世代集積回路への応用として、2) ナノチューブと周辺材料の電子物性(接合特性)、3) キャリアー緩和ダイナミクスを把握する。さらに新機能付加・新物質創製のための加工プロセスに関し、4)フラーレン複合によるマッカイ構造物質の機能性、5)ナノチューブ、フラーレン構造体の構造変化解析を行なう。最後に6)第一原理超大規模シミュレーションによるナノ構造物性を実施する。

3.今年度得られた成果、および達成度

<成果>

基本特性

  1. バンドル状CNTではファンデルワース力によりバンドル結合が弱まることから、本年度は、バンドル状構造の強化を図る原子溶接シミュレーションを実施した。具体的には、GSW理論(一般ストーン・ウェルズ理論)による炭素原子の結合変換過程シミュレーション法を高速化し、512本に拡大したCNT結合過程を解析し、安定な結合構造を得つつある。
  2. ダイヤモンド薄膜などのナノ炭素構造に超伝導性の可能性が予想されるため、新しい高温超伝導メカニズムを提案し、理論シミュレーションを実施した。

応用特性

  1. CNTと周辺材料との接合部の電子特性シミュレーションし、解析規模を拡大すれば(196-398原子)、電子、構造特性に対象金属の種類による電子、構造特性の相違が明確とになり、今後、デバイス全体の大規模シミュレーションが必須であることを得た。
  2. CNT種類を判別するための螺旋度を同定する方法として、蛍光スペクトルが有力であるが、半導体的なCNTではこの方法が従来より不適とされたが、今年度解析により、CNT格子温度が室温一定条件下では、光学励起状態は250fs以上の励起寿命を有し蛍光発光を見るに十分な寿命であり、この方法の適応性が示された。
  3. グラファイト多層膜に、Arイオン照射を行いダイヤモンド構造を見出したという実験(理研)についてシミュレーション追試を行い、グラファイトの予想外の頑丈さと、sp3構造に類似した結合の存在を明らかにしたが、ダイアモンド変態を結論付けるまでには達していない。
  4. GSWによるフラーレンからマッカイ構造の創成するシミュレーションを実施したが、巨大な計算となり、計算法を改良しつつ進むも、まだ途上である。
  5. 第一原理オーダーN法第一原理電子状態計算プログラムCONQUESTをSi表面上のGe3次元ハットクラスターの構造安定性に適用した研究を実施した。