■発表要旨
1.プロジェクトの目的
地球温暖化に象徴される地球環境問題は、科学的な研究テーマの領域を遙かに超えた重要な課題になっている。しかし、この問題に取り組むにあたっては、科学的基礎をしっかりさせる必要があることは言うまでもない。地球温暖化は自然変動と人為起源による強制的変化の複雑な相互作用の結果として起こっている可能性が高いが、自然変動の解明はその重要性にもかかわらず、シナリオ主導型の温暖化研究に比べて注目度が低い。そこで、私たちは気候の自然変動を生む要素現象のメカニズムを明らかにした上で、精密な大気海洋大循環モデルを用いて正確に再現し、さらに季節変動から経年変動、さらには10年スケールの変動の予測を目指す研究を本プロジェクトで行なっている。この現象解明の過程で、熱帯においてエルニーニョに次ぐ大きな自然変動であるインド洋ダイポールモード現象を発見し、世界の気候研究に一つの潮流を起こすことができた。この成果に基づき、欧州と共同で開発して来た最新の高性能大気海洋結合モデルSintex-Fを高度化して、気候変動要素現象を再現し、世界の季節変動予測をリードする研究を展開している。こうした予測に向けた研究を推進するだけでなく、その成果を広く社会に展開する事も本プロジェクトの目的である。
2.今年度当初の計画
2.1 学問上の成果に関するもの
季節予測アンサンブル実験を行い、これまでの結果を含めその結果を解析しSINTEX-Fの性能および予測研究における先端的成果をまとめる。
2.2 モデル関連の整備に関するもの
(a)ESにおいてアンサンブル予報実験が効率よく実行できるよう結合モデルのプログラム修正を行う。
(b)新大気モデルECHAM5.3を導入したSINTEX-F2.0の動作検証実験。
(c)大気モデルの計算効率を高める為の検討作業/高解像度AGCMの実験準備。
(d)海氷モデルの導入、淡水フラックス保存の計算手法。
(c)海洋データ同化手法の検討と試験的実装。
3.今年度得られた成果、および達成度
<成果>
2.1 に関する季節実験に関するもの
大気・海洋結合モデルSINTEX-F(T106L19 ECHAM4.0 + 20 x 1.50~0.50 OPA 8.2)を用いて以下のリアルタイム予測と過去再現実験としての季節予測実験を行ない、世界的にも優れた予測結果が得られた。現在、論文をまとめている。具体的には、18個のアンサンブルを用いたリアルタイム予測実験では、今年の秋に起きたIODの負のモードと冬の太平洋のラニーニャ状況を数ヶ月前に正しく予測した。また、モデルの予測性能を検証する為の追加実験として9個のアンサンブルを用いた過去再現実験を1982~2004年を対象にして行い、エルニーニョの予測を世界に先駆け2年に延ばすとういう高いスコアーを得た。
2.1 に関する基礎/プロセス研究に関するもの
- 太平洋とインド洋間の相互作用の影響を調べる為の実験を計画し現在進行中。
- 1997/98のエルニーニョの発達におけるバリアー層の影響評価に関する研究を実行。
- IODはENSOと異なる物理的現象である事を再確認する為の実験的研究を行い、ENSOの影響はあるものの、IODはENSOとは独立した現象でその終息にはインド洋の季節内変動が重要な役割を担っている事をシミュレーションで示した。
以上の2.1に対する成果の達成度は100%
2.2 モデル関連の整備に関するもの
(a,b)計画通りに実行(達成率100%)
(c,d,e)(年度当初に予定していたモデル開発プロジェクトが立ち上がらなかった為、
遅れが出た)(達成度は、それぞれ50, 20,20 %)