■発表要旨
1.プロジェクトの目的
超高速計算が可能な全球、領域モデルとして対応できる非静力学大気モデル、および非静力学/静力学海洋モデルを結合し、地球シミュレータの能力を最大限に活用できる非静力学・大気海洋結合モデルを開発する。本モデルの活用により、気象シミュレーションから気候シミュレーションへの連続的なアプローチが可能となり、従来課題とされてきた予測可能性とその限界について、新たな科学的手法を拓くものである。
2.今年度当初の計画
- (1) 昨年度の成果をもとに、大気、海洋それぞれのコンポーネントに関する超高解像度(3km以下)の事例シミュレーションを行い、その物理的性能を検証する。
- (2) 大気、海洋それぞれのコンポーネントの計算性能最適化をさらに推進し、大気海洋結合モデルとして、従来にない超高速シミュレーションが可能な高速性を実現する。
- (3) (2)において計算性能最適化した大気海洋結合モデルを使用した予測シミュレーションを実行し、その予測精度についての検証を行う。
- (4) CIP-CSLR、AMR等の先進的スキーム、および物理的検証、計算性能評価を行う。
(今年度当初計画に加えた計画)
- (5) 大気、海洋コンポーネントに対して、昨年度に加えて、さらに新しい事例(ダウンバースト、トルネードなど)のシミュレーションを行い、本モデルの適用事例の拡大と、応用範囲の広さを示す。
- (6) 都市型気象予測シミュレーションを念頭に入れ、都市域特有の人工廃熱や輻射などを取り込んだモデルと本大気海洋結合モデルとを結合し、今後のスケールダウンシミュレーションの準備を行う。
3.今年度得られた成果、および達成度
<成果>
- (1) 大気、海洋コンポーネントに対して、解像度、および雲物理過程を変更して短期的予測シミュレーションをその物理的性能の妥当性を示した。
- (2) 全球大気、領域大気、および全球海洋、領域海洋の各コンポーネントの計算性能最適化を行い、地球シミュレータのほぼ理論的限界に匹敵する非常に高い計算性能を実現した。さらに、これらのコンポーネントを結合し、結合モデルとしても地球シミュレータの計算性能を限界まで活用できる高い計算性能を実現した。
- (3) 本大気海洋結合モデルを用いて台風予測シミュレーションを行い、大気コンポーネントのみで予測シミュレーションを行った場合と比べて、進路予測、強度予測ともに、より観測に近い予測結果を得ることができた。さらに、大気海洋の相互作用を予測シミュレーションに用いることで、従来より標準となっている72時間(3日)予測より長期のシミュレーションの予測可能性を示した。
- (4) CIP-CSLRの導入はほぼ導入完了の段階に入った。現在、さらに精度を向上させるためのスキームの高度化を行い、検証を重ねている。動的メッシュに関する導入基礎方針を決定し、導入のための基礎的テストを行っている。導入のための課題を計画通りに進めることが出来た。
- (5) ダウンバーストを事例とし、再現シミュレーションを行い、モデルが適用可能な範囲を広げることができた。しかし、局所的な鉛直流の再現はできたものの、その流れの強さは観測に比較して約3分の1程度であった。このことから、鉛直層の扱いと乱流モデルのさらなる改良が必要であることがわかった。
- (6) 人工排熱、輻射効果を導入している都市キャノピーモデル(UCSS,(独)建築研究所により開発)と本大気海洋結合モデルを結合し、数10m以下の解像度を念頭に入れた新たな全球-領域―都市対応大気海洋結合モデルの基礎開発を終了した。
<達成度>
各目標項目(1)から(5)に対応させて達成度を示す。
- (1) 100%
- (2) 100%
- (3) 100%
- (4) 85%
- (5) 75%
- (6) 90%