■発表要旨
1.プロジェクトの目的
本研究では、温室効果ガスに対する全球大気輸送モデル、反応性大気微量成分に対する全球化学輸送モデルを用いて、温室効果ガスのソース・シンク、大気組成変動の解析を行う。また、全球化学輸送モデルを用いて高解像度モデル計算によって、対流圏化学プロセスを明らかにし、グローバル及びリージョナルな大気質変動の環境影響及び気候影響の解析を行う。
2.今年度当初の計画
1) 二酸化炭素の前進及び逆モデリング
地球環境フロンティア研究センター(FRCGC)と気象庁(JMA)の化学輸送モデルを用いて、実際の気象データ(再解析データ)を基にした前方演算を実施する。この結果を用いて、逆解析を行い、解析結果を比較する。
2) 化学輸送・気候モデリング
解像度をT106に高めた全球化学輸送モデル(FRCGC/UCI)を用いて、都市域におけるオゾン生成の高解像度シミュレーションを行い、オゾン生成効率に対する解像度の影響を評価する。また全球化学輸送モデル(CHASER)を用いて対流圏オゾンが気候にどのような影響を及ぼすかの気候感度実験を行う。さらにエアロゾルの生成プロセスを取り込んだ全球化学輸送モデルを高解像度化する。
3.今年度得られた成果、および達成度
<成果>
1) 二酸化炭素の前進及び逆モデリング
a) NIES/FRCGCモデルを基に陸域生態系モデルをオフラインで組み込んだ1゜×1゜分解能の大気輸送モデルを用いて順計算および64地域分割逆モデル計算をCO2に対して行った。1960-2003年の長期積分の結果、観測されたCO2の経年プロフィールと良い一致を得ることが出来た。得られたCO2の経年増加率及び陸域及び海域のソース・シンクフラックスとENSO indexとの相関が従来の低解像度研究に比べて、非常に高くなることが分かった。また、従来の解像度2.5°x2.5°x15層を0.25°x0.25°x47層まで高分解能した全球大気輸送モデルが開発され、温室効果ガスの輸送解析が行なわれた。高解像度化により例えばつくばのCO2濃度実測データの再現性が飛躍的に高まった。
b) 気象庁グループでは気象庁二酸化炭素輸送モデル(JMA_CDTM)を高解像度化(2.5°→1°)し、逆解析の結果1990 年代の陸上生態系の吸収量として0.6~0.8GtC/y、海洋の吸収量として 2.0~2.2GtC/y を得た。
2) 化学輸送・気候モデリング
FRCGC/UCI全球化学輸送モデルについてT63からT106へのアップグレードを行い、T21からT106まで解像度を変化させたときに、全球及び、地域的なオゾン収支にどのような影響が現れるかについて評価を行った。その結果、オゾン生成効率は分解能が高まるに連れて減少するが、T106でもまだT63に比べて差が見られ、高精度予測のためには更なる高解像度化が必要であることが分かった。また対流圏化学および気候の完全結合実験に向けての準備作業を行った。本結合実験に先立って、対流圏オゾン変動の気候への影響をオフラインで評価する簡略化実験を計画し、積分期間・オゾン変動分布を含めて実験デザインおよび計算シナリオについて検討した。
<達成度>
1) 二酸化炭素の前進及び逆モデリング
- a) FRCGC:ほぼ研究計画通り進行しており、今年度計画の約95%が達成された。
- b) JMA:WDCGGの収集した観測データの利用手法の確立を含め約80%が達成された。
2) 化学輸送・気候モデリングに関しては全体的には約70%の達成度であった。