■発表要旨
1.プロジェクトの目的
①海洋深層の乱流拡散過程、②大気境界層の乱流拡散過程といった、 次世代気候モデルの構築に必要不可欠な海洋中および大気中のサブグリッドスケー ルの物理現象を地球シミュレータを用いて詳細な数値シミュレーションを実施することで、個々の現象を支配している物理機構を明らかにする。さらに、この物理機構に基いて、気候変動モデルの予測精度向上に大きく貢献できる高精度で信頼できるパラメタリゼーションを開発する。
2.今年度当初の計画
①深層海洋乱流グループ
海洋深層の乱流拡散過程の主要なエネルギー供給源である内部潮汐波および大気擾乱起源の近慣性内部波のグローバルな空間分布を数値シミュレーションを通じて明らかにする。その結果と海洋微細構造観測のデータを統合することにより、海洋深層の乱流混合係数のグローバルな空間分布を明らかにする。得られた現実的な乱流混合係数分布を海洋大循環モデルに組み入れ、モデルパフォーマンスの向上の検証を行う。
②大気境界層乱流グループ
Large eddy simulation(LES)モデルを用いて地球シミュレータにより高解像度の大気境界層の乱流データベースを作成し、これまで開発してきた大気・海洋1次元乱流モデルの検証・改良を行う。
3.今年度得られた成果、および達成度
<成果>
①深層海洋乱流グループ
現実的な海底地形および潮汐フォーシングを組み入れた3次元数値シミュレーションをおこない、内部潮汐波エネルギーのグローバルな空間分布の予測をおこない、その結果と投棄型流速計(XCP)観測の結果を結合することにより、海洋深層のグローバルな乱流拡散係数の分布図を作成した。得られた乱流混合係数の分布を簡略化した海洋大循環モデルに組み入れて数値計算を行い、従来の一定分布係数を仮定した場合との比較をおこなった。さらに、海洋乱流のもう一つの重要なエネルギー供給源である大気擾乱起源の内部波のグローバル分布を調べるための三次元数値シミュレーションを開始した。
②大気境界層乱流グループ
昨年度開発した1次元大気境界層乱流モデルを3次元局地気象モデルに組み込む際に重要な計算安定性を改善した。続いて、1967年に行われたWangara野外実験を用いて1次元乱流モデルの検証を行うため、Large eddy simulation(LES)モデル及び1次元乱流モデルによる観測データの再現実験を行った結果、1次元モデルがLESの結果を非常に良く再現することがわかった。
<達成度>
①深層海洋乱流グループ 75%
②大気境界層乱流拡散グループ 80%