発表要旨
1. プロジェクトの目的
地震波の解析から現在のスナップショットとしてのマントルの三次元構造が明らかになってきた。その顕著な特徴は、海溝から沈み込んだプレートがマントル遷移層付近で横たわっているという構造である。本プロジェクトでは、数値シミュレーションの手法を用いて、この「スタグナントスラブ」の成因の解明をはじめ、マントル対流の時間的・空間的変動を規定する要因を明らかにするとともに、マントル構成物質の複雑なレオロジーがプレート運動に与える影響や、相転移の存在がマントル対流パターンに与える影響などについて調べる。
2. 今年度当初の計画
- マントル遷移層で沈み込んだスラブの様々な形状を調べるために、スラブとマントル遷移層との相互作用について調べる。
- 小スケール対流による核・マントル境界域でのマントル物質の変形を調べ、D“層における地震波速度異方性およびULVZ(Ultra-low velocity zone)の成因について明らかにする。
- ポストペロブスカイト(PPV)相転移が球殻内のマントル対流に及ぼす影響を調べる。
3. 今年度得られた成果
- 下記のような条件により実験値と同程度のクラペイロンスロープにおいてもスタグナントスラブが形成されうることが分かった。(1) 海溝の後退によって水平なスラブが遷移層おいて形成される。(2) 粘性の増大により下部マントルへの対流速度が低下する。(3) 熱膨張率の温度・圧力依存性によるスラブの負浮力の低下が起こる。また、横たわるスラブは、スラブと周囲との粘性コントラストが低い時に下部マントルへ貫入し易いことが分かった。
- 変形計算の基礎となる小スケール対流のモデルを3次元化した。
- PPV相境界はマントル対流パターンを大きく変化させないことが分かった。しかしマントルの熱的状態はわずかに変化し、コアからの熱流量はわずかに上昇することが分かった。