平成18年度地球シミュレータ研究プロジェクト利用報告会

プロジェクトテーマ : 乱流の世界最大規模直接計算とモデリングによる応用計算

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発表要旨

1. プロジェクトの目的

壁境界層やエクマン境界層に代表される規範的な乱流構成要素に対して、ナビエ・ストークス方程式の高精度・高解像度な直接数値シミュレーションDNSを行い、その物理現象を明らかにするとともに、乱流の世界最大規模データベースを構築する。一方、LES乱流モデルの信頼性を確認しながら、風車を代表とする環境・エネルギー機械、および都市環境の流れを対象に、遷移・剥離を含む複雑現象の大規模シミュレーションを行い、現象解明とともに、新しいデザインなどを提言する。特に、風車の設計、事故調査、発電量の予測とった工学的応用を目指す。本プロジェクトは、日本流体力学会の乱流コンソーシアムを母体として活動を展開中であり、学会の協力を得て、蝶を代表とする昆虫の飛翔の科学の解明といった新しい話題にも研究を広げる。

2. 今年度当初の計画

基礎班

乱流の規範的な問題について大規模数値計算(DNS)を実行し、データベースの構築を行う。また、データ解析を行い、乱流の普遍的性質を明らかにすることを目的とした。今年度は、特に、回転を伴う乱流境界層(エクマン境界層)の大規模DNSによるデータベースの構築、大規模DNSによる乱流中のスカラー量の輸送過程の解析、世界最大規模の乱流データベースを用いた乱流中の間欠性の解析、乱流のラグランジュ的統計のデータベースの作成、気体と液体の界面における乱流構造に関するハイブリッドシミュレーションの実施を目指した。

応用班

3. 今年度得られた成果

一様等方性乱流の世界最大規模直接数値計算データを解析し、乱流場の間欠性について解析し、エネルギー散逸率と渦度分布の統計における類似性を明らかにし、さらに、wavelet解析によって、乱流場の情報圧縮率がレイノルズ数の増加とともに良くなることを見出した。また、大領域DNSによって大規模渦のもつ普遍性を明らかにした。

Passive scalar の大規模DNSを行い、空間精度がスカラー場の間欠性に及ぼす影響を解析した。また、一様な平均スカラー勾配のある場合におけるスカラー場の間欠性指数を計算し、非等方性、普遍性について解析した。

回転を伴う乱流境界層(エクマン境界層)を対象として、直接数値計算とデータベースの構築を行い,WEBにて公開した.その成果を地球シミュレータジャーナルに投稿し,発表した.また,回転を伴わない乱流境界層の直接数値計算のプログラムを開発した.

応用班では、風車を代表とした複雑な乱流現象を含むアプリケーションの、大規模かつ詳細な数値解析を行った。風車は,変動する自然の風况下で回転して運転される。これは風車周りの流れが、複数のレイノルズ数状態が存在し、かつそれらが風の条件により変動することを意味する。その為、風車の解析では複数の乱流現象を高精度に再現できる必要があり、また実用的な時間内での計算が求められる。今年度は、これまで行ってきた基礎班との情報共有ならびにLES解析によって得られた知見をもとにしたDES(Detached Eddy Simulation)解析を行い、風車周りの流れを詳細に分析した。計算対象には、NASA/Amesで行われた風洞試験風車を対象とした。これらの計算を通して、風車後流の発達メカニズムならびに従来のモデル理論の拠り所となっているBetzの翼素・運動量理論との関係を明らかにした。

応用班の新しい発展として、生物飛行のバイオインフォマティクス・データベース構築を行った。ハチドリ、蛾、蝶、蜂、蝿、アズミウマの合計6種類の飛翔生物の幾何学モデル、運動学モデルおよび力学モデルを構築し、羽ばたき飛行に関する大規模な力学シミュレーションを行い、生物羽ばたき飛行の空気力学に関する総合データベースの構築を施した。また、昆虫型人工飛翔体を目指した羽ばたき飛行安定性・操縦性の研究を展開した。昆虫の羽ばたき飛行の優れた安定性や操縦性を定量的に評価するために、大型昆虫蛾の羽ばたき飛行における静的・動的安定性に関する研究を実施した。さらに、小型飛翔体の設計指針を創出した。生物型(羽根形状を有する)の回転翼をもつ小型飛行体に対して、力学シミュレーションを行い、羽ばたき飛行と比較して、超低レイノルズ数における回転翼の空力性能を定量的に評価した。

また、応用班として、昨年度まで大都市をイメージした構造物により都市キャノピーによる乱流構造の解明に務めてきたが、今年度はランダムに配置された構造物による都市キャノピーの検討を進めたほか、都市内の公園や植樹、植え込みなど植生によるキャノピーが乱流構造に与える影響について検討を行った。