発表要旨
1. プロジェクトの目的
SiC半導体デバイスは、耐放射線にすぐれ、高電圧・高温での動作が可能なことから、従来の半導体デバイスでは動作が困難な極限環境下で用いられる素子として期待されている。しかしながらSiCデバイスの特性を左右する酸化膜界面には界面欠陥が多く存在しており、理論的に予測されるより悪いデバイス特性しか実現できていない。物理的測定手法から推定される界面欠陥の原子構造から電気特性を推定することは困難であるため、第一原理分子動力学法を用いて実デバイス界面を模擬出来るようなアモルファスSiO2/SiC界面欠陥構造を計算機上に生成し、電子構造を算出することで界面欠陥の物理構造と電気特性との関連性を明らかにすると共に、SiC結晶表面の酸化膜成長メカニズムを明確にする。
2. 今年度当初の計画
- (1)中規模界面モデルを用いた加熱・急冷計算におけるパラメータ導出
- アモルファスSiO2/SiC界面構造は、SiC結晶上に成長した結晶SiO2界面原子構造モデルに対し、第一原理分子動力学法を用いた加熱・急冷計算を行うことによって作成する。中規模モデルを用いて生成温度条件等の各種パラメータ決定を行う。
- (2)大規模界面モデルを用いた実デバイス界面模擬計算
- 中規模界面モデル計算で決定されたパラメータに従って、実デバイスを模擬出来る大規模界面モデルを生成する。さらに、この界面構造の電子構造解析と欠陥導入計算を行う。
- (3)界面での酸化反応模擬計算
- 加熱・急冷計算にて得られた界面構造のSiO2層に酸素分子を導入しつつ加熱計算を行い、実際の酸化過程がどのように進むのかシミュレーションを行う。
3. 今年度得られた成果
- (1)中規模界面モデルを用いた加熱・急冷計算におけるパラメータ導出
- パラメータ探査の結果、終端固定条件の元で4000K、2psの加熱の後、3500Kまで冷却し、終端自由条件で再度3500K、2psのポストアニリーングを行った後、室温まで冷却する事で、SiO2層の十分なアモルファス化が進む事が分かった。
- (2)大規模界面モデルを用いた実デバイス界面模擬計算
- 上記の加熱条件の元で1000原子規模の界面構造生成を進め、アモルファスSiO2/SiC界面構造の生成に成功した。動径分布関数や局所密度等の解析の結果、SiO2層の十分なアモルファス化が確認できた。電子構造解析等については計算継続中。
- (3)界面での酸化反応模擬計算
- 酸素分子を導入するとSiO2層中およびSiC界面のSi原子と反応し解離した。その結果、SiC界面のSi-C結合が切れてCダングリングボンドが生成され、界面欠陥の候補と考えられている炭素クラスターの生成が観察された。温度条件等を変え計算継続中。