平成18年度地球シミュレータ研究プロジェクト利用報告会

プロジェクトテーマ : 気候・海洋変動のメカニズムの解明およびその予測可能性の研究

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発表要旨

1. プロジェクトの目的

短期気候変動のメカニズムの解明とその予測可能性の研究を主たる研究目標として、重要なメカニズムに関するプロセス研究と予測可能性研究の為に必須な研究ツールである大気・海洋結合モデルによるシミュレーション研究の両面から研究課題に取り組む。この研究を展開するに当たり、我々はエルニーニョ/南方振動(ENSO)研究等により次第に明らかになって来た日々の天気のカオス性に打ち消されない長期(天気予報の視点から)のトレンドに関する”potential predictability”を研究の重要な焦点として、また現象のターゲットとしては我々のグループが最近の研究で明らかにして来たインド洋ダイポール(IOD)に注目して、その予測可能性と世界の気候に及ぼす影響についての先駆的研究を目指す。この研究推進に当たり、地球シミュレータを充分に活用して可能な限り高解像度のシミュレーションを実行し、社会的にも充分にアピールできる予測研究の推進を目指す。

2. 今年度当初の計画

従前用いてきた中程度の解像度を有する大気海洋結合モデルを用いて、熱帯気候の典型的なモードとして知られているIOD及びENSOのリアルタイム予測を昨年度に引き続き行う。また大気海洋結合モデル実験を用いた感度実験を行い、IODと季節内振動との相互作用について、特にその相互作用に対する海洋の役割について理解する。

上記モードとそれよりも空間規模の小さい現象とのスケール間相互作用を調べるため、大気海洋結合モデルの高解像度化を図る。また極域の影響を評価するため海氷モデルも組み込む。

3. 今年度得られた成果

歴史実験により過去に発生したENSO及びIODの予測可能性を評価したところ、前者については20ヶ月、後者については4ヶ月の予測スキルがあることがわかった。特にENSO予測スキルは昨年度の12ヶ月から著しく進歩したことは特筆すべきことである。予測実験では、2005年の負のIODを1季節前から、2006年の正のIODを1年前から、そして現在発達中のENSOを1年前から予測することに成功した。これらの成功については、以下に掲げる様々な新聞に掲載された。

インド洋のみ大気との結合を断ち切った感度実験を行ったところ、季節内振動の振幅
が著しく低下したことから、季節内振動の強さにインド洋が大きな役割を担っていることが判った。またIODの発生により大気中に有意な変化をもたらし、その結果モンスーンに伴う季節内振動の南北伝播に影響を及ぼすことも判った。

現在結合モデルで用いられている海洋モデルOPA8.2において、トレーサの移流スキーム、河川流出、水平拡散スキーム等を改善したテスト実験を行い、OPA8.5へ更新した。これは高解像度化された結合モデルで用いられる予定である最新の海洋モデルOPA9へ移行するためのテスト実験で、地球シミュレータにおいて問題なく動作していることを確認した。また中程度の解像度を有する大気モデル (T106L19)との結合実験も50年積分が終了している。また大気モデル単独で高解像度化したT319L45も問題なく動作することを確認した。