平成19年度 地球シミュレータ利用報告会

全球・地域スケール化学輸送モデルによる大気組成変動とその気候影響の研究

発表資料 (2.5MB)

1. プロジェクト名

全球・地域スケール化学輸送モデルによる大気組成変動とその気候影響の研究

Atmospheric Composition Change and its Climate Effect Studied by Chemical Transport Models

2. プロジェクト責任者名

秋元 肇 (海洋研究開発機構・地球環境フロンティア研究センター)

Hajime Akimoto

3. プロジェクトの目的

平成20年度の中期計画達成期間までに、全球化学輸送モデルを用いて、温室効果ガス、大気汚染物質等の大気組成変動のシミュレーションを行い、地球規模・地域規模でのそれらの収支や気候影響の解析を行う。

4. 今年度当初の計画

大気輸送モデルを用いて六フッ化硫黄(SF6)、ラドン(222Rn)等の非生物起源の化学的に不活性な大気成分について50年間にわたる長期計算を行い、気候変動やエルニーニョ現象に起因する10年スケールの大気輸送の変動を調べる。その上で、CO2, CH4, N2Oの主要温室効果気体の大気中濃度の経年変動に及ぼされる大気輸送変動の全球的かつ長期的な影響を評価する。また特にCO2については、複数のモデル(NIES/FRCGCとJMA_CDTM)を用いてその結果を比較し、推定の精度を高める。特に平成18年度は、逆モデルの精度を高めるため、誤差の原因となっている気象の年々変動、分解能依存性、大気力学のパラメタリゼーションなどについて検討し、逆モデル計算の精度を高める。また、N2Oについての計算に着手する。

5. 今年度得られた成果、および達成度

成果

  1. 大気中二酸化炭素(CO2)の濃度測定は、国際地球観測年である1957年に米・スクリプス海洋研究所(SIO)のキーリング博士によって南極点で開始され、続いて1958年にハワイ・マウナロア山でも始められた。それ以来CO2濃度観測地点数は飛躍的に増え、2005年には200地点を数えるほどである。このようなCO2観測網の拡大によりCO2の放出・吸収源強度(フラックス)の空間的分布を以前よりも正確に推定することが可能となった。またその一方で、数十年スケールの長期観測は、気候変動が陸上及び海洋生態系に影響を与え、その結果として生じる大気中CO2濃度の長期的変化を調べるために必要不可欠である。我々はスクリプス海洋研究所によってバーロー、クリスマス島、ラホイヤ、マウナロア、サモア、南極点で観測されてきたCO2濃度の季節変動の長期的変化に注目し、モデル計算結果と併せて解析を行った。モデル計算はCCSR/NIES/FRCGC化学気候モデルをECMWF再解析データ(1958~)及びNCEP2再解析データ(1979~)でナッヂングして行い、それら計算結果と観測結果にデジタルフィルタリング技法を適用し、CO2濃度の季節変動成分と長期変化成分を抽出して比較した。その結果、季節変動の経年変化は、ほぼ大規模気候擾乱、それも主にエルニーニョ現象(ENSO)に起因する大気輸送の変化により引き起こされていることが分った。ENSOは気温・降水量変化や森林火災を通して北半球及び熱帯におけるCO2フラックスの変動要因となるだけでなく、大気輸送による両半球間のCO2輸送にも影響を与える。大気輸送の経年変化は、非生物起源で化学的に不活性な大気成分(SF6222Rn)の変動からある程度推定できる。本研究では大気輸送の指標としてSF6を用いたが、そのモデル計算値は1972年から現代までのSF6濃度観測値とよく一致した。そのようにCO2の長期変動における輸送の影響を調べることにより、1990年代のCO2濃度の経年変動のほとんどは熱帯フラックスの変動に起因しているということが分かった。また、過去50年間のCO2濃度の季節変動の、輸送影響による変化の傾向は観測地点によっても違うことが示唆された。
  2. 気象研モデルによる研究 : 従来のTransCom等で用いられてきた特定年の気象データから生成した輸送行列による逆解析に対して、複数年の輸送行列の平均値もしくは実気象データを用いた輸送行列による逆解析の優位性(観測データ選別率、解析精度)を確認した。この成果を受けて、90年代の実気象データを用いた高解像度輸送モデルによる輸送行列の作成に着手した。今年度中に、NIES/FRCGCとJMA_CDTMの逆解析相互比較を実施し、その結果を比較して推定精度に関する情報を得ると共に、誤差の原因に関する調査(気象の年々変動、大気力学のパラメタリゼーション等)を開始する予定である。

達成度

  1. 地球環境フロンティアモデルによる研究 : 80%
  2. 気象研モデルによる研究 : 60 %